真夜中の流星群

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「よし、じゃあ安全運転で行くからなー」  北沢が実家の車を出してくれることになった。  寝泊まりはグランピング施設を借りるみたいだ。  車内には俺と北沢、女子は双葉と、双葉と仲の良い凜香の四人が乗っていた。  各学年がそれぞれ別の車で行く。奥多摩までは新宿から一時間ちょっと。  車内では流行りの音楽や学校の教授の話で盛り上がった。   「ってか黒島君って、彼女いないのー?」  気づけば多摩市に入っていた。あと少しで現地に到着というところの信号待ちで、凜香が聞いてくる。  凜香は金髪のショートボブで丸顔、瞳が大きく可愛い系。小柄で手足が短く、まるで小動物のようだ。だけど、雰囲気から長女であることがわかるくらい、しっかり者だった。  常にニコニコしていて空気が読める凜香は、男女分け隔てなく自然体で接するノリの良い人。  大学生なのに母性があると弄られるほどだ。 「黒島に彼女? いるわけないじゃん」  運転手の北沢が先に答える。  俺がムッとすると、北沢は「あ、怒った?」と小馬鹿にするように笑い、女子二人も笑っていた。 「本当にいないの?」  今度は双葉が聞いてくる。次も北沢が答えると思ったけど、笑うだけで言葉を続けない。  俺は「本当にいないよ」と答えると、双葉は「いると思ってた」と窓の外を見ながら呟いた。  それって、どういう意味だ……。  いると思ってたってことは、モテそうってことか? 良いことなのか、悪いことなのか……気になり出してソワソワしてしまった。  双葉は俺のことを、どう捉えていたのだろうか。  凜香がすかさず「私も黒島君にはいると思ってたな。なんか余裕があるからさー」と言ってフォローしてくれる。 「黒島は余裕があるんじゃなくて、ただトロイだけだよ」  北沢がまた喧嘩を吹っかけてくる。  助手席の俺は「運転してくれてるから黙ってるけど、着いたら覚えとけよ」と言い返した。  北沢は軽快にハンドルを切りながら「脅されてまーす」と茶目っ気たっぷりに小さく叫んだ。  後部座席の二人が笑う。よく思い返したら、ここまでの道のりはこういう展開ばかりだった。  だけど、何となく双葉との距離も近づけた気がする。  この車内での会話でわかったことは、全員彼氏彼女がいないということだ。  楽しい時間のまま、現地に到着した。
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