真夜中の流星群

6/9
前へ
/9ページ
次へ
「何でそんなに笑ってるの?」 「いやだって、すごいスムーズに取ってきたから。悪気のない泥棒みたいだったよ」 「そりゃ、私たちの食材でもあるから。悪いことはしていないでしょ」  テーブルの上に、肉と玉ねぎ、そして卵を持ってきた。  キッチン周りを見渡す双葉。 「黒島君、オムライスなんかどう?」 「オムライス? 大好物だけど」 「やった、腕が鳴るな」  まるで自分のキッチンかのように、スムーズにオムライスを作り始める双葉。  これは普段からやっている人の手つきだ。美しい工程を目で追う。  七、八分でオムライスは完成した。  皿に移して、仕上げのケチャップ追いがけ。『くろしまくん』とケチャップで字を書いてくれた。 「はい完成! 黒島君のお口に合えばいいけど」 「ありがとう。お店で出てきてもおかしくないくらいだね……」  え……? もしかして、付き合ってる? そう思い込んでも罪にならないくらい、双葉と接近していた。  みんながバカ騒ぎしている庭の様子なんて目に入らない。  双葉が作ったオムライスは、今まで食べてきたオムライスのどれよりも味が濃くて美味しかった。  その後、みんなでバドミントンや近くの川で川遊びをして過ごした。  その間も、お昼のオムライスのことが頭から離れない。  また作ってくれないかな……双葉のことを意識しなくなる瞬間が一秒たりともなくなった。  ――夜になって、今日のメインである星空の写真撮影が始まる。  近くの丘にみんなで歩いて向かう。すぐ近くにベストスポットがあった。  みんなが自慢のカメラで、満点の星空を撮影し出す。  北沢も俺の隣で「俺なんかちっぽけな人間だな」などと、よくわからない自分に酔ったセリフを吐いた。 「黒島君、撮れた?」  少し離れていたところで撮っていた双葉が、歩み寄って聞いてくる。  俺もちょうど話しかけにいきたいと思っていたので、想いが繋がった気がして嬉しくなった。 「あ、ああ。下手くそだけど」  撮ったデータをすぐに見せる。  一応、下手くそなりに試行錯誤して撮った写真だ。  見せても恥ずかしくないと思えた。 「黒島君、撮るの上手くなったね!」  双葉は俺の肩をポンッと叩いて、上出来な一枚に華やかな顔で褒めてくれた。  突然のボディタッチに、体が硬直する。  もう、双葉と付き合いたい。  誰でもいいわけではなく、双葉だけ。  気持ちを抑えるのに必死だ。  満足に写真を撮った後、グランピング施設に帰って各々が眠りにつくことになった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加