真夜中の流星群

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 大きい広間で、先輩も含めて全員で雑魚寝している。  みんな芸術点の高い写真が撮れたからか、帰ってからも終始上機嫌でどんちゃん騒ぎをした。  全員がお酒を飲みながら、自慢の写真を見せ合って盛り上がった。  俺もアルコールが回ってきて、気分が良くなる。  北沢は率先して先輩を盛り立て、最高な空気を作り上げていた。  双葉も楽しそうに、顔を真っ赤にして笑っている。  高校生活なんて比にならないほど自由で、希望に満ち溢れていた。  高揚とした気持ちのまま、目を瞑り、そのまま意識が遠くに行ってしまいそうになる。  そこからの記憶がパッタリ途絶えた。  ――ガサゴソとした音で、意識が戻った。  まだ真っ暗。まだ真夜中だと、直感でわかる。  すぐに首は動かない。薄目だけ開けて、周囲を確認してみる。    どうやら、みんな飲み潰れてしまったみたいだ。雰囲気でそれを理解した。  部屋のほとんどを覆っているタフテッドのカーペットに、参加した全ての先輩たちが横たわっている。  もうひと眠りするか……さすがに頭が痛い。もう一度意識を遠のかせようと脱力した瞬間に、一定のテンポで何かの音がするのに気づいた。  よく耳を澄ませてみる。  すぐ近くで、その音がする。  ネチ、ネチッと、粘膜と粘膜が触れ合っている音だった。興奮と興味が、俺の好奇心を襲う。  間違いない。この音は、キスをしている音だ。  想像していた大学生像は、これだった。こういうのを、大学生の青春と呼ぶんだと思っていた。  このまま眠ってしまうわけにはいかないと思えた俺は、その音の方にゆっくり寝返りを打つ。  このタイミングで目が覚めてラッキーだ。  寝返りを打った俺に、誰も気づいていない。  薄目だった目を、ちょっとずつ開けてみる。  どの先輩と先輩がキスをしているのか……その当事者たちを捉えた瞬間、頭が急激に冴えた。  冷や汗が出てくる。 「ちょっと、ダメだよ……みんな起きちゃうよ」 「いいじゃん、もうちょっとだけ」 「もうー、バカなんだから」  聞き覚えのある声。  男女どちらとも、さっきまで俺の近くで話していた声だ。  周囲を気にするように小声で話しているけど、淀みなく耳に入ってくる。  むしろ聞きやすいくらいの声……この声は絶対そうだ。  はっきりと見てみる。  当然俺のことなんか気づいていない。  俺のことなんか気にせずに、二人は唇を何度も重ね合っている。
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