真夜中の流星群

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「あれ? 黒島君?」 「あ、凜香ちゃん?」  缶チューハイやらスナック菓子やらが入った袋を持って、凛香がやって来た。  まさか俺以外に起きている人がいるとは思わなかったので、大声が出そうだった。 「黒島君もここに来たんだ」 「う、うん……寝苦しくてね……っていうか、凜香ちゃんも?」  驚いている顔を崩さずに聞くと、凜香はフッと鼻で笑うように息を吐いた。 「だって、気まずかったじゃん?」  黒島君もあの現場見てたでしょ? と言いたげな目をしている。  実は凜香も、双葉と北沢のキスを見ていた……俺は悟った。  そう……あの物音で起きたのは、俺だけではなかった。 「黒島君も飲み直そうよ」  凛香からレモンチューハイのロング缶を受け取る。  凛香も同じやつを持って乾杯した。  この際飲まなきゃやっていけない。俺はグイッと、半分くらいを一気に飲んだ。  それを見た凛香がクスクスと笑って、俺の背中を擦ってきた。 「女の子って、そんなもんだよ」  俺の気持ちに寄り添うように、温かい手で背中を擦ってくれる。  その優しい声に、また泣きそうになった。  凛香は俺の気持ちも、現実に直面した今の心情もわかってくれている。 「でもそうじゃない人もいるから。黒島君のことを心から好きな人に、いつかは出会えるよ」  そう言ってグイッと、凛香はチューハイを飲み込んだ。  俺は今度こそ、涙が流れた。  凛香にバレないように上を向く。 「え……」  天に広がる黒の中に、奇跡かと思うような流星群が……。  俺の中に生まれた嫉妬心や喪失感が全て弾け出されるみたいだ。  まさか、流星群が見られるなんて。  失恋のショックが、和らいだ気がする。  隣に座っている凛香を見てみると、星空を眺めながら微笑を浮かべていた。 〈了〉
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