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その頭脳で様々な研究をし、玲のために身を捧げる魔法使いのような男は、常に玲の願いを叶える献身ぷり。
その余裕さで常に周りをみて、善悪と規律を重んじる大臣みたいな大人の男は、スマートな紳士で玲も頼りにしている。
そんな彼らはみな、玲が大切で……そんな中に入る余地はないのだと一氏は思った。
「玲さん……僕なんかが一緒にいて、迷惑じゃないですか?」
「は?何言ってんだ?」
「だって、みんなすごくて、玲さんに相応しくて……僕なんて」
「あのな、一氏。おまえ勘違いしてるよ」
「え……」
玲は呆れたようにため息をつくと、一氏の手を引っ張って歩き出す。
その横顔は怒っているようで……でもどこか嬉しそうだった。
「私はな、誰一人欠けたら嫌なんだよ」
「へ?」
「……だから、おまえも相応しくないとかいうな。一緒にいたいって、それだけで十分だろ?」
玲は不敵に笑う。その横顔が一氏にはかっこよくて、頼もしくてたまらない。
「それに……私はおまえがいないと困る」
玲の一言に、一氏はまた泣きたくなる。
この人がいれば大丈夫と思えてくる。
「ほら、行くぞ!はぐれるなよ?」
「……はい!」
***
一氏の臆病な心も、玲の笑顔一つで勇気に変わる。
それでも彼のパニックは健在で、常に何かに驚き慌てている姿は酷く滑稽だった。彼はいつだって玲の一言を待っている。そんな彼に玲は「大丈夫だよ」と笑顔を向ける。それだけで一氏は大丈夫なんだと安心できる。
ある時、一氏が助けを求める前に玲が彼を助けた。そのことで落ち込む一氏を玲が励ます。
「んなこと一々気にするなよ。私がピンチの時はおまえが助けてくれるだろ?仲間ってそーいうもんだぞ」
「玲さん……僕、頑張るね」
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