パニックだらけのハート

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 ある日一氏はお使いを頼まれていた。ちょっと入り組んだ所にあるお店。しかし詳しい場所がわからない。何度地図をみてもさっぱりだ。道行く人に尋ねればいいのだが、初対面の相手。どう切り出すべきなのか、そもそも何て言ったら失礼にならないのか。思考がぐるぐるしてフリーズしてしまう。もう既に頭の中はパニックだ。  1人でまともにこんな簡単なこともできないのかと、泣きそうになる一氏。もうやめたいと思っていた時「あれ?」と聞き慣れた声が一氏の耳に入る。 「おまえ何してんだ?」 「あ……玲さん……あ、あの」  一氏はちょうど自分たちの拠点であるアジトへ向かう玲と出くわした。こんな情けない姿を見せたくないという思いと、助けてほしいという思いが混ざり合う。 「おい、どうした?なんかあったのか?」 「え、と……その……」 「心配すんな。大丈夫だから、言ってみろ。な?」  言葉遣いは男っぽいのに、その顔は女性らしく柔らかい微笑みで……たまらず、一氏は正直に全て話した。  話を聞いた玲は「なるほどな」と納得して、一氏の手を取る。 「じゃあ一緒に探そうか」 「え?」 「私もここら辺は詳しくないんだけどね。二人で探せばきっと見つかる」  玲の笑顔が眩しい。一氏にとって、その一言がどれだけ嬉しかったか。  玲はいつだって一氏のことを見放さない。そして仲間を頼れと言ってくれる。そんな玲が一氏はたまらなく好きだった。  でも……そんな玲に自分は釣り合うのだろうか? そんな不安が重なり、一氏は益々自信をなくす。  玲の仲間はみんな、一氏からすればハイスペックすぎる人たちばかりだった。  玲と対等にいや、それ以上に態度が大きい王様みたいな男は、なんでもできる超人。  その王様の親友で、常に玲の隣でその身を守る騎士みたいな男は、厳しくも優しいうえに玲が甘える相手。
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