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一氏がそう言えば、玲はニッと笑う。一氏にとっては玲は絶対的な存在で、弱音を吐く姿なんかみたこともなくて、そんな玲を支えたいと思っていた。
***
そんなある日。一氏は玲と2人で出かけていると、玲を追い回す謎の軍団に遭遇する。
「ぎゃっ!な、なんですか!」
案の定一氏は驚いて玲に抱きつく。
「こら、一氏。痛いよ」
「え!あ!ご、ごめんなさい!」
慌てて離れる一氏。顔は真っ赤だったり真っ青だったりと忙しなく、頭の中までパニックだ。
そんな一氏の様子を見て、玲は口元に弧を描く。
「いいよいいよ。気にすんな。とにかく今は、これをどうするべきか……だな」
玲の言葉に一氏もハッとして頷く。目の前にニヤニヤと集まる謎の軍団の男達。この場を切り抜けるイイ策は……思いつかない。一氏はどうしようとオロオロすると、玲が一氏の頭に手をのせた。
「いいか、一氏。私が合図を出したら、おまえだけでも逃げろ」
「え?」
「私は大丈夫だから、早く行け。いいな?」
有無を言わせぬ視線に一氏は頷くしかなかった。でもそれは納得できないとやっぱり首を振る。
「い……嫌だ!僕もここにいます!」
「馬鹿、足手まといだ」
「け、けど……」
「……大丈夫だって」
玲はそう言って安心させるように笑う。その笑みが眩しくもあり、残酷でもあった。結局、必死な抵抗も虚しく二人は連れ去られる。
乱暴に放り投げられたそこ。窓もないコンクリの壁で囲われた暗い部屋。外界との繋がりを遮断され一氏は血の気が引いた。玲のために何もできない。助けを呼ぶことも、立ち向かうことも。
けれどそんな一氏の心情などお構いなしと男達は2人をニヤニヤと笑っている。捕まえられた時より数が少ないなと気づくも、嫌な笑みを浮かべるその視線に耐えられず俯く一氏。
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