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突然一人の男が「あー!」と大きな声を上げたことで一氏はビクッと体を震わす。
「こいつ、よく見たら可愛いじゃん」
そう言って男が近づいてくると、一氏は恐怖でガタガタと震えた。どうしようと考えても何も思い浮かばない。一氏はパニックになりすぎて、思考が停止していた。
そんな一氏の前にたつ、玲。
「やめろ」
その一言は凛々しく、男達を前にしても恐れない強さ。
「私の仲間に手を出すな」
その言葉が、一氏の耳に入る。一氏は玲に目をやる。すると、いつもの強気な態度が、ほんの少し崩れていたことに気づいた。玲の震える指先は、一氏にしか見えていない。
それを見て、パニック中だった一氏は少しずつ冷静になる。
こんな時まで気丈に振る舞う玲。大切な玲にこんなことまでさせて、情けない。一氏は自分が恥ずかしかった。でもどうしたらいいか、それがわからない。
そんな時に玲の言葉が思い起こされ、脳に響く。
“一氏は弱くなんかない。いざって時は動ける奴だ。仲間がピンチの時。おまえの出番だ”
そう、玲は一氏を信じている。こんなに情けなく、ダメな男を、仲間を……ただ、信じているのだ。
いつも玲に守られてばかりだった。そんな現状に仕方ないと理由をつけて満足していた自分。一氏は唇をぎゅっと結ぶ。そうだ、そうだよと今度は自分が玲を守るんだと意気込み一氏は立ち上がる。
そして一氏は玲の前に立ち、男達を睨みつけた。そんな一氏の変化に玲は驚き目を見張る。
「なんだぁ?やるってか?」
「おもしれぇ、やれるもんならやってみろや!」
2人同時に殴りかかってくる。しかし、その拳が届く前に一氏の蹴りが炸裂し、1人は倒れて意識を失う。もう1人の男はそれに怯み後ずさったところを一氏が逃がさないとばかりに追い討ちをかけ、鳩尾を殴り意識を底に沈めた。
「……へぇ、やるじゃん一氏」
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