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「ああっ……こ、こわかった」
冷や汗をかきやがら震えて言う一氏。それを見て玲は苦笑する。一氏にしてはよくやったなと、労いの言葉をかけようとしたところで、ぎゅっと手を握られた。
「こ、ここは怖いから。早く出ましょう」
そう言って、一氏は玲の手を引き前を歩く。玲の手を取って先を進む姿は普段の彼からは想像できないくらい 勇ましい。
その姿に「頼りになるじゃん」と玲は笑顔で呟くも、繋いだ手の温もりがなんだかくすぐったくて、一氏は返事ができなかった。
「あ、あそこ!出口かな?」
一氏は扉を見つけて、そこを目指す。早くこんな場所を抜け出して玲を安全なところに連れていかないとという気持ちで、足がもつれそうになる。そんな一氏の背中を玲は見つめた。
「おまえがそんなに必死なのも珍しいよな」
「……だって、こんな状況は僕のせいだから。一緒にいたのに、守れなかった」
一氏は下を向きながら答える。守られてばかりの自分が嫌で、捕まる前に立ち向かえていればとか、自分を追い込むネガティブな言葉の羅列を自分自身に打ち込んで落ち込む。そんな一氏に玲は呆れた眼差しを送る。
「あのさぁ、なんでもかんでも自分のせいにするなよ」
「え?」
「私が攫われたのは私の責任だし、おまえは巻き込まれてる方。それでも、守ってくれてるじゃん。十分だよ」
玲の言葉に、その不敵な笑みに一氏の心は救われる。絶対に玲を無事に連れ帰ると、改めて意志を強く持ち外への扉を開けた。
「はい、いらっしゃーい」
そこには自分たちを捕まえた謎の軍団の者たちが、ズラリと待ち構えていた。ここに誘い出されたのかと一氏は眉根を寄せる。
「帰れると思った?残念、ここで消えてもらう予定なんだわ」
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