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相手の1人がそう言うと、周りの者がゆっくりと近づいてくる。何をされるかわからない。この人数相手に勝ち目はない。一氏はそう判断して、咄嗟に玲を抱きしめる。それは相手から守るように、自分が盾となる戦法。
「おいっ、一氏!離せ!」
「ダメ!玲さんはっ、僕が守るからっ……」
一氏の決意は硬く、たとえ玲に強く言われようとも離す気はない。
ーーさあ、かかってこい。
一氏がこれからくる痛みに歯を食いしばり待ち構える。しかし、いつまでたっても痛みはこない。不思議に思い目をあけると、背中から聞こえる相手の悲鳴。
一氏が何事かと恐る恐る振り向けば、そこに広がっていたのはーー。
「おいおい、大丈夫かおまえら」
駆けつけた仲間による制裁。それはものの数秒で終わるもので、あっという間の幕引き。
「よ、よかった……」
ほっと安堵する一氏。気づけば玲を抱きしめたままでいて、当然慌ててパニックを起こす。
「ご、ごめんなさい!」
素早く離れて謝る一氏。そんな彼に玲は微笑みを浮かべた後、追い打ちをかけた。
「ありがと。……かっこよくて、ドキドキしちゃったよ」
「っ!!!」
ここで一氏は大パニック。
ボンっと音が聞こえるくらいの赤面。茹で蛸状態になり、そんな一氏の初心な反応に、玲も仲間もみんなが笑う。
その笑顔に包まれて、その中に混ざれたことを一氏は嬉しくてはにかんだ。
でもこのドキドキは当分収まりそうにない。
「一氏!」
玲が呼ぶ声が聞こえる。一氏は玲に目を合わせる。見上げてくる玲に少しドキリとして、一氏は無意識に目を逸らしてしまう。
「はい……なんですか?」
「おまえって、やっぱりかっこいいよな」
「……へ?」
何を言い出すんだと困惑顔の一氏に玲は続ける。
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