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「さっき私を守ってくれた時のさ、あの真剣な眼差し!好きなやつはかっこよく見えるっていうけど、本当だな」
「……え?す、好きぃ?!」
突然の言葉にドギマギする一氏。それを見て玲も自分が言った言葉に気づく。そしてニヤリと笑い揶揄うように言った。
「あれ?照れてるのか?今更だろ?私は皆が大好きだ。一氏もその中に入ってる」
玲は一氏を仲間として好きだ。それでも“好き”という単純な言葉に反応する一氏は、やはり恋する男の子。
「僕は……玲さんが……」
「ん?」
「……なんでもないです」
一氏がそれを口にするのはまだ先かもしれない。
***
その後、アジトに戻っても尚、一氏の頬は上気していた。
そんな一氏を見て仲間が揶揄うと、更に真っ赤になる。そんな初々しい姿に皆は微笑ましく笑うのだった。
「あ、あの!玲さん!」
一氏は勇気を振り絞って玲を呼び止める。そして振り向いた玲の顔を見て更に頬を赤くした。
「なんだよ?風邪か?」
「いえっ、その……僕……」
ハッキリしない一氏の態度に玲もわけがわからず首を傾げる。しかし、何か閃いたのか一氏に近づいて、不敵に笑う。
「一氏、屈め」
「え?は、はい」
素直に膝を少し曲げて屈む一氏。その姿に「いい子だ」と玲は呟く。そして、その頭を優しく撫でた。
「今回は本当に助かったよ。おまえがいなきゃ、私も1人だし、逃げることもできなかった」
玲はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「あいつらにも、そしておまえにもいつも私は守られてばっかだな。頼りになるよ、本当に」
玲の感謝の言葉に一氏は嬉しそうにはにかむ。そんな一氏を見て、玲は目を細めて微笑んだ。
玲のその笑みが一氏の心を暖かくする。そして思うーー“この人を、絶対に不幸にしたくない”と。
***
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