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パニックだらけのハート
日常はいつも突然に牙を向く。それはどんなに些細なことでも、受け取る者によっては感想が違う。
「たいしたことない」と言う者もいれば「無理」とつっぱねる者も。受け取る人数によってその感じ方は千差万別。
その中でも、この男以上に常に騒いでる者はいないだろう。
「ぎゃああああああ!むり、むりです!ごめんなさい!」
一氏というこの情けない男は日頃からこれがスタンダードだ。180cmの高い身長に対してひょろっとした体。おまけに女の子みたいに顔がいい。鬱陶しいボサボサの黒髪と常に下がり眉で17歳にもなって泣き言ばかり言う彼。
そんな臆病でビビリの一氏の前に現れたのが玲という少女だった。最初の出会いは道端でぶつかりそうになったことだ。アスファルトに頭を擦り付けながら謝り続ける一氏に笑いながら手を差し出した彼女。人とうまくコミュニケーションがとれない一氏のことを面倒くさがらず、しっかりと目を合わせて会話をする玲。同い年なのに姉御みたいだなと一氏が思ったのも無理はない。
それほどまでに玲は、いつも自信満々で強気でかっこよくて……憧れる。
一氏はいつしか、玲が仲間に笑いかけるように自分もそこに混ざりたいと思えてきた。
でも一氏は人と少し話すだけでいつもオドオドしていた。常時プチパニックの連発。呆れる皆の中で玲も笑う。
恥ずかしくなる 情けなくなる。こんなにも自分が惨めで弱いことを思い知らされる。
けれど玲は続けて言う。
「一氏は弱くなんかない。いざって時は動ける奴だ。今は仲間に頼れ」
その言葉は同情でもなんでもなく、嘘偽りのない玲の心からの言葉。
「そんで、仲間がピンチの時。おまえの出番だ」
ニカっと輝く笑顔の玲。その顔に言葉に一氏は救われる。
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