76 ネズミちゃんランド

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76 ネズミちゃんランド

 そのお昼に、高峰さんも加えて、赤ちゃんのことも話しつつ、予定を立てて話し合って、 「ランドに到着だぜ!」  桜ちゃんが言った通りに、ネズミちゃんランドに来ました。  私、涼、桜ちゃん、マリアちゃん、高峰さんの5人です。そして今は、朝の開園時間です。  テスト対策期間前に、息抜きをしよう、という桜ちゃんの発案が通りました。  あ、あと、桜ちゃんにエイプリルさんの話をしたら、 『えっ、今すぐ知り合いたい。みつみん、お願い!』  と言われて、エイプリルさんに連絡を取り、桜ちゃんとエイプリルさんは、私を通して繋がりました。 「あ、ほら! 『ネズミー』揃ってるよ! 撮らせてもらお!」  桜ちゃんが示す先には、ネズミちゃんランドのキャラクター、ネネ、ズー、ミミ、の三姉妹がいた。通称『ネズミー』である。 「行こう行こう」 「行くか」  私とマリアちゃんは、桜ちゃんについて行き、 「ランド、こんなトコなんだな」 「だね」  ランド初体験らしい涼と高峰さんが、それに続く。  通りがかりの人に頼んで、集合写真のようなそれを、撮ってもらう。  そのあとも、ノイシュヴァンシュタイン城をもとにしたお城をバックに撮り、城内でも撮り、レジャーを楽しみ、出会うキャストさんと、またパシャリ。 「次、どうする?」  棒型チュロスを食べながら、周りに聞く。まあ、みんなで棒チュロス、買ったところだからだけど。 「ジェットコースター駄目な人、居る?」  桜ちゃんの問いかけに。 「乗ったことがない」  涼が言い、 「僕もないなぁ」  高峰さんもそれに続く。 「なら1回乗ろうぜ!」  の、結果。ジェットコースター初体験の男子二人が撃沈した。 「大丈夫?」  ベンチに座って放心している二人に、声をかける。 「や、うん。大丈夫……だが……驚いた」 「高低差と浮遊感と遠心力、ヤバいね」 「二人は休んでるか?」  マリアちゃんの言葉に、 「僕は少し、休んでたいな」  高峰さんが、苦笑しながら言う。 「俺も、ちょい、落ち着きたい」  涼も休むらしい。 「じゃ、どうする? 三人で周ってようか? 5人で休む?」  桜ちゃんが言う。 「あ、僕のことは気にしないで」 「俺もここに居る。行けそうになったら連絡する」  では、と、涼たちとは一度、別れることに。   ◇ 「……いいの? 成川さん、行っちゃったけど」  ベンチに座ったまま、高峰が言う。 「三人で行動してりゃ、変な絡まれかたはしねぇだろ。それに、高峰だけ残すのも、なんか怖いしな」  涼の言葉に、高峰が力無く笑う。 「橋本は本当に、友達思いだね」 「それの何が悪い」 「やー……人って、吹っ切れるとこうなるんだね」 「それは俺のことか、お前のことか、どっちだ」 「どっちもだよ。……遊びに行くって発想、あまり、したことなかったし」 「まあな。墨ノ目、課題がエグいくらい出てたしな。みんなで集まって、なんとかこなしてただろ。お前の力を借りながら」  それに、高峰はまた、少し笑って。 「橋本も結構頼られてたよ」 「そうだったか?」 「そうだよ。……橋本さ、中学のクラスライン、抜けたけど。年明けに同窓会、あるんだってさ。行く?」 「……考えとく」   ◇  三人で射的ゲームをしたら、一つ、大当たりが出た。 「みつみん、すげぇ」 「持ち運びが大変だな」 「まー、背負えるし。なんとかなるでしょ」  大当たりを当てたのは、私。景品は、ランドのキャラ、シロクマの『ホワベアくん』の大きなリュック。  私は持っていたカバンをホワベアくんに入れて、背負う。 「どう? 違和感ない?」 「ランドに溶け込んだ」 「溶け込んだな」  桜ちゃんはネネの小さめぬいぐるみが当たり、マリアちゃんはカエルのキャラ『ケロピン』の、3連キーホルダーを当てた。 「でさ、橋本ちゃんたち、大丈夫かな」 「聞いてみるね」  ラインを開き、送信。すぐに返事が来た。それに返信。 「大丈夫だから来るって。ここ、送っといた」 「二人の射的センス、見てみるか」  桜ちゃんが不敵に言った。 「射的、な。小学生の夏祭り以来か?」 「僕もそんな感じだね」  と言った二人は、持ち玉5発全てを命中させた。 「なんやねん君たち」  桜ちゃんが、呆れた感じで言う。 「なんやねんってなんだ」 「しかも橋本ちゃんも高峰っちも、大物当てやがって」 「無視か」 「大物っていうか、服だけど」  涼が5個当てたうちの一つは、全キャラのぬいぐるみ袋詰め。しかもそれを私にくれた。  高峰さんが当てた大物は、トカゲのキャラ『リザーさん』の着ているコートを模した、人が着れるコート。 「高峰はまあ分かるが、橋本も上手いんだな」 「橋本、運動系得意だよ。体育の成績も良かったし」 「……みつみんがこのまま育成していけば、第2の高峰っちの誕生では?」 「育成て。ゲームじゃないんだから」  ツッコミつつ、なら次は、と、なり。  お化け屋敷です。 「いっこうぜー!」  桜ちゃんを先陣に、入る。  楽しく叫びながら、時にはマジでビビりつつ、ゴール。 「凝ってたな」 「あの血糊の演出、どうなってるんだろ」  そんな感想を述べる二人を連れて。 「そろそろお昼にしよ! この時間なら空いてるし」  桜ちゃんの提案により、レストランへ。 「分かっちゃいたが、値段、えげつないな」  涼の言葉に、高峰さんが無言で頷く。 「そこを気にしちゃあおしめぇよ」 「百合根、いつにも増してテンション高いな」 「いつもの基準分かんないけど、テンション高いのは自覚してるよ。楽しいし」  雑談しながらそれぞれメニューを選び、食べながらまた雑談。 「赤ちゃんの名前、決まった?」  桜ちゃんに聞かれる。 「さあ……そういう連絡は来てないかな。1週間以内に届け出ないといけない筈だし、もう決めてはあると思うけど」  スマホで確認しつつ言う。 「そっか。二人だけで初めての子育てって、大変そう」 「あー、まあ、だろうね。私の時も、大変だったって聞いたし」 「どんな幼少期だったんだ?」  マリアちゃんに聞かれる。 「幼少期っていうか、生まれたての頃はね、おとなしすぎて、心配したって。ほとんど泣かなくて、逆にどうすれば良いか分からなかったってさ」 「人間色々だねぇ……」  そんなことを話しつつ、食べ終えて。  また遊びまくり、お土産を買って、帰宅。 「さて、で。これはどこに飾ろうかねー」  リビングのテーブルにお土産のクッキー缶を置いてから、自室に入り、ホワベアリュックから出した『全キャラぬいぐるみ詰め詰め』を見て、呟く。  ランドのキャラは、現在25キャラクター。ぬいぐるみはデフォルメされて小さくなっているけど、表に置いておくと、マシュマロに、なにこれ? って、されかねない。 「……まあ、クローゼットの中に並べるか」  私はクローゼットを開け、ぬいぐるみを置く場所を作っていく。  文化祭で買ったぬいぐるみも、涼から貰った吊るし飾りも、写真立てに入れた『ライオンの子供』のポストカードも、クローゼット内の一角に飾っている。 「ん、よし。こんなもんで……」  場所を作り、ぬいぐるみを並べ、スマホでパシャリ。涼へと送信。 『こういう感じにしました。ありがとう、涼』   ◇ 「……可愛いかよ」  部屋で休んでいた涼は、スマホに送られてきた画像と、コメントを読み、言った。  渡したぬいぐるみは、階段状に、3段になって並べられていて。しかもそれが、今、送られてきたということは、少し前か今か、そのくらいに、ぬいぐるみを並べていた筈で。 「(俺の心を掴んで離さないこんちくしょうめ)」  フランス語で呟きながら、『どうも』と送った。
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