78 カラオケ打ち上げ・テスト結果・久しぶりのバイト

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78 カラオケ打ち上げ・テスト結果・久しぶりのバイト

「参加は嬉しいけど、高峰っち、他の人との予定とかは無かったの?」  次の日、土曜。打ち上げをしよう、と、一緒にテスト勉強をしていた5人で、カラオケ店に集まった。 「一応、別の日にあるよ。でもそれ、結果が分かってからだから」 「ほーう。果報は寝て待て、寝るのは惜しい、寝るより祝え、の精神だから。こっちは」 「それ、良いね」 「んでは、順番決めましょうかね」  桜ちゃんの一声で、じゃんけんにより、順番が決まっていく。  涼、マリアちゃん、私、高峰さん、桜ちゃん、になった。 「あー……ならこれ」  涼が歌ったのは。……確か、アメリカで流行っている歌だ、これ。そういや、アプリに送られてきたな。で、また、当たり前のように上手いな。  頼んだ飲み物や軽食が来ても、涼はそのまま歌っていた。涼、堂々としてるなぁ。  涼が終わり、マリアちゃん、私、と歌って。 「それじゃ、次、僕だよね」  高峰さんは、後夜祭のとは別の、バリバリハードロックを歌った。 「良いのか? ここで歌って?」  マリアちゃんが言う。 「みんなは知ってるしね。ギター、持ってくれば良かったかな。無いと、少し消化不良だ」 「じゃ、次ん時はギター持参ね! で、私!」  桜ちゃんが歌い、みんなで3周して。 「誰か一緒に歌わん?」  桜ちゃんが言った。 「どの曲?」  聞けば、 「これとか」  それは、アイドルグループの一曲。 「良いよ。歌おっか」 「やったぜ」 「私も混ざる」 「やったぜ」  桜ちゃん、マリアちゃん、私の三人で歌い、 「次、歌いたい人、いる?」 「あ、じゃあ、橋本と」  高峰さんが言った。 「マジか。今、楽譜見ただけだぞ?」 「2、3回やればいけるよ。そもそも橋本、歌上手いし」  高峰さんが涼を引っ張る形で、歌い出す。男性二人組の歌だ。  ……見ただけにしては、上手いぞ、涼。ちゃんとハモってるぞ。  そしてそのまま2回ほど歌えば、ほぼ完璧。 「すごーい」  タンバリンをシャンシャン鳴らす。 「橋本、本当にレベルアップしていくんじゃないか?」 「レベルアップて」 「二人ともうまーい!」  そのまま時間まで、好きな曲を好きな人が歌い、終了。  解散して、涼と、電車で。 「ジョン・ドゥ、近いうちに生配信するかもよ」 「わお、マジですか。ありがとうございます」 「あとカメリア、来年に向けて、少し準備してる」 「……何かイベントが?」  なのか? そうなのか? 「詳しくは、また後日」 「うぅ……焦らしますね……」 「だから詳細は言えねぇけど、それとは別に、ウチ、来るか?」 「お邪魔します」  そして、涼が、バナナカップケーキを焼いてくれて。 「くれ」 「え?」  持っていたカップケーキを一口食べられた。 「ん」  涼は食べながら、自分が持っていたカップケーキを差し出してくる。  ……中々の、試練。……よし、勢いだ。 「あむっ」 「美味い?」  もぐもぐしながら、頷く。当たり前じゃん。 「じゃあ、貰う」  涼はまた、私が持っているのをぱくり。 「……」  そのまま食べさせ合いっこをしました。  なんでやねん。嫌じゃないけど。   ◇  さて、明日は予定通り、産休明けの見込みだそうで。  その前日の今日は、テスト返却日だ。 「……おお?」  返ってきたテストと、順位の紙を見て、小さく呟いた。  テストは、自己採点通り。これは良し。  で、順位が。総合順位が、……1位なんですけど?  2年二学期にして、初1位なんですけど? 「……涼」  それらを持って、涼の席へ行けば。 「赤点、回避」  と、テストと順位の紙を見せてくれた。私も涼に見せる。 「いや、回避どころか、本当に平均点……超えてるのもあるじゃないですか」  順位だって、大幅アップだ。 「光海はすげぇな」  テストと順位の紙を返してもらいながら、言われる。 「涼だってすごいですよ?」  少し不満げに言って、私も返した。涼は軽く笑った。  そしてお昼、食堂にて。 「私はこれ」  桜ちゃんが、順位の紙を置く。 「私はこうだ」  マリアちゃんも置く。 「私はこうです」  置いて。 「僕はこれね」  高峰さんが置き、 「……こう」  涼が置いた。 「待ってくれや。同率?」  桜ちゃんが言う。その意味するところは。  私、1位。高峰さん、1位。 「……これ、何かの間違いだったりする?」  聞いてしまう。 「そうだったら、もう呼び出されたりしてるんじゃない? 本当の順位だと思うよ」  高峰さんに言われて。 「……そうですね。うん、ですよね」  紙が、それぞれの手元に戻されていく。  お昼を食べ終えて、午後の授業に取り組み。  さあ、久しぶりのバイトだ。   ◇  出産祝いは、受け取ってもらえた。良かった。  アデルさんはシャルルを見ているので、接客は私とエイプリルさん。二人で、ラファエルさんの様子も見ながら、と決め、仕事を開始。常連さんたちは、もう既に、お祝いを渡したとのこと。まあ、昔馴染みですしね。  と、少し、エイプリルさんの接客で、気になることが。タイミングを測りつつ、エイプリルさんと自分の手が空く瞬間が重なるのを狙い、エイプリルさんに声をかける。 「(エイプリルさん。少し、注文の取り方について聞いても良いですか?)」 「(なんでしょう)」 「(私は、こう書いているんですが……エイプリルさんはどう書いてます?)」  言って、注文用のメモを見せる。走り書き、かつ、略称だけど、読める文字で書いている。略称なのは、時間短縮のためだ。 「(こう、です)」  エイプリルさんのは、予想通り、ほぼ料理名をそのまま書いていた。 「(エイプリルさんとお客様がそのままで良いなら、それで良いんですが……少し、焦っているように見えまして。こういう書き方、どうでしょう?)」 「(やってみます。ありがとうございます)」 「(あとで、略称を送りましょうか?)」 「(それもお願いします)」  そこでお客様に呼ばれ、エイプリルさんに断りを入れ、対応へ。エイプリルさんの夕食の賄いのあと、私も賄い。身だしなみチェック。ホールへ。  その後、アデルさんたちに問題が起きたりはせず。閉店し、後片付けと掃除をして、帰宅。  帰ってからまず、料理名と略称をスマホのメモに打ち込み、間違いがないかチェックして、コピー。  エイプリルさんのラインに送り、これがそうです。と、送信した。  で、その他の片付けをしていると。  涼から電話だ。 「涼?」 『ああ、光海、……父さんたちに、結果、見せてさ。……凄いなって、言ってくれた。ありがとう、光海』  な、なんだよう。なんだよう……! 「……また、そっちに行っても、良いですか?」 『もう遅いだろ。その気持ちだけで充分だよ』 「むう……なら、朝に、ぎゅってします」 『……分かった。走ってくるなよ。行くから』 「はぁい」 『……お前ホント可愛いんだから、お前は、……はあ……じゃあ、切るから』 「はい。おやすみなさい、涼」 『……おやすみ、光海』  電話を切る。明日の準備と寝る支度をして、リビングに一声かけ、寝た。  で、朝に、しっかり抱きしめました。
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