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少し離れたところでは、利休くんが秋人さんに「どうぞ」と『蔵』のノートを渡していた。
秋人さんはノートを受け取って、ヒュウと口笛を吹く。
「カッコイイじゃん。これ、なんて書いてあるんだ?」
秋人さんは表紙に顔を近付けて、ぶはっ、と噴き出した。
「って、なんだよ。『ホームズ』って書いてるじゃん!」
「清兄は、今の『蔵』の象徴だからさ」と、利休くん。
「たしかにそうだよな。今の『蔵』といえば、ホームズだ。なんたってあいつは、『京都のホームズ』だからな」
秋人さんの声はよく通る。サリーにも話が聞こえていたようだ。
サリーは、ぽかんとしてホームズさんを見上げた。
「……あなた、『京都のホームズ』って呼ばれているの?」
ホームズさんは、ええ、まぁ、と苦笑し、
「僕がホームズと呼ばれているのは、僕の苗字が家に頭と書いて、家頭だからなんですよ」
いつものように胸に手を当てて、にっこりと微笑む。誰に対しても変わらない応対をする彼の様子に、私たちは声を揃えて笑った。
~Fin~
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