第三章 過去のしがらみ

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「どういう神社なのでしょうか」 「歴史はなかなか古く、創建は仁賢天皇の五世紀末とされています。五穀豊穣、海上安全の守り神を祀ったはります。あと――」 「…………」  その後に続けた澪人さんの言葉に、  ホームズさんも私も言葉が出なかった。  ホームズさんは、すべてを理解したように、大きく首を縦に振る。 「我が子にそうした御守を肌身離さず持っているように伝えるとなると、理由は一つしか考えられませんね」  そう思います、と澪人さんが頷く。 「敦子さんが口にしていた、『業』というのもそのことだった……」  ホームズさんは独り言のように言って、顎に手を当てる。  私は得体の知れない空恐ろしさに、何も言うことができない。  佐田さんは、そんな特別な御守のブレスレットが、一度千切れてしまったと言っていた。  大丈夫なのだろうか?  ホームズさんも同じように思ったのか、そうだ、と顔を上げた。 「澪人さん、御守についてお訊きしたいのですが――」
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