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「ああ、葵さんの気持ちは、ちゃんとサリーに伝えているのよ。そしたらサリーはね、『直接話す』と息巻いて、こうして日本にやってきたわけ」
サリーが一歩前に出た。
「慶子の言う通り、私はあなた方に何も教えられなかったわ。だからアメリとクロエにも同じように声を掛けた。二人は二つ返事で来ると言ってくれた。けど、あなたは違ったわよね。私としては、不本意だったのよ。私のことを知らないまま、断ってほしくなかった。そして心のどこかで『恋にかまけてちゃ、駄目よ』って気持ちも正直あったわ……」
でも、とサリーは遠くを見つめる。
「あなたの展示を観て、その言葉は引っ込んだわね。あなたは、家頭清貴という師の許で育ったから、才能を伸ばせたってことが伝わってきたわ。あなたの展示はとても伸び伸びしていたから……」
続けて慶子さんが言う。
「サリーは、最近、『苦手を克服するより、特技を伸ばせ』って方針に変わったのよ。清貴の側にいるって、まさにそんな感じだと思ったみたい」
「……ありがとうございます」
私は、はにかみながら頭を下げる。
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