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言われてみれば、この展覧会で、ホームズさんは私を完璧にバックアップしながらもアイデア云々に関して、一切口を出してこなかった。もちろん、私がヒントを求めた時は、自分の考えを話してくれたけれど、それだけだった。
こんなふうに自由にできるというのは、普通に考えればありえないのだろう。
だけど、とサリーは腕を組む。
「すべてを分かったうえで言うわ。修業にいらっしゃい」
私は、ごくりと喉を鳴らした。
咄嗟にホームズさんの方を向こうとしたその時、彼が私の横に立ったのが分かった。
私は驚いて、ホームズさんを見上げる。
ホームズさんは、サリーを前に胸に手を当てて、頭を下げた。
「どうか、彼女をよろしくお願いいたします」
私は驚いて、大きく目を見開いた。
ホームズさんは、戸惑う私を見下ろして、柔らかく微笑んだ。
それは、時折見せる『嘘をつきな笑顔』ではなかった。
「ホームズさん……」
ですが、とホームズさんは、まるで条件を突きつけるようにサリーを見た。
「僕は、彼女が大学を卒業してからの方が良いと思っています。今、日本の大学でしか学べない、多くのことがあると思っているので」
また、無理をしているのだろうか?
そんな私の視線に、ホームズさんは頷く。
「ええ、また瘦せ我慢をしていますよ」
驚いた私に、彼は小さく笑って話を続ける。
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