melody-11

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「失敗……なんだよ、色んなことがさ」 「それさ、失敗してるのって先輩がでしょ?」 「原因は私にあると思う」 「……そうかなぁ。ちゃんと話もせず別れちゃってるよね?鷲見先輩だって言いたいことは絶対あると思うよ?だからわざわざさっちゃんを呼び出してるんだと思うけど」  話したいことがまさか高校の時のあの話?絶対聞けない、聞きたくない。余計聞きたくない。 「今更聞いたところで……どうにもならない」 「さっちゃんと鷲見先輩の気持ちは変わるかもしれないよ?」   (気持ち?) 「たった一回の失敗でしょ?それで気まずくなって離れちゃった二人の本音は?今更だけど今だから話せるかもしれないよ?」 「私はぁ!その後の彼氏とだってうまくいってないの!私の身体が原因、だから話すことなんかないっ!」 「鷲見先輩が話したいこと聞きたくないの?」  先輩の話したいことなんか……もっと聞くのが怖い。聞きたくても聞けない、聞いたら余計トラウマになりそうで。  初めてのセックスだった。当たり前に先輩が全部初めて。それこそ人を好きになったのだって初めてなんだ。その全てを捧げた人、大袈裟だけど、すごく重い言い方だけど。 「皐月、力抜いて?」  震える身体が全然言うことを聞かない。怖いとか嫌だとかそうじゃない、単純に緊張、風船がもうパンパンに膨らんでいつ破裂するかな、くらいのドキドキ感。嬉しさだってめちゃくちゃあった。ああ、どうしよう、先輩が私に触れてる、全部見られて全部をあげられる……その興奮になんて名前をつけたらいいのか。 「痛っ……」  思わず呟いた言葉に先輩の身体がピクリとして動きが止まった。それで先輩が止めようとする、そう思ったから……。 「……や、め……」  やめないで。続けて欲しい、やめないで欲しい、お願い……そう言ったつもりが言葉になりきらなかった。 「皐月……震えが……」  違うの、そうじゃない。先輩ちがうの、やめないで……これは震えてるけど怖いとかじゃないの、ドキドキが止まらないだけ、先輩が好きすぎてどうしようもなくて……もちろん、そんな思いを言葉にできなかった。だって私を見つめる先輩の顔が不安そうに歪んで、先輩の心が離れるのがわかったから。 「……ご、めん。ちょっと……無理かも」  心だけじゃなくて、先輩の身体もそこで離れた。
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