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melody-10
会いたくなかったのだと、会ったことで思い知らされてそれにただ悲しくなった。思い出はもう思い出で、それも美化されたもの。なのに風化していない、いつまでも私は過去に囚われている。
悲しくて、辛かった気持ち。寂しくて、胸が痛くなる思い。ただそれだけが今も胸に込み上がってくる。
会ったっていい思い出なんかない、ないんだ。なのに何を話せと言うんだ。何を――話したいと言うんだ、先輩は。あの頃何も言ってくれなかった先輩が、今さら私に何を話したいんだ。
もう終わった恋。私にとっては初恋で、忘れられない恋だった。だって未だに胸が苦しくなるほど切ない。
子供の頃の、恋に恋していたようなあの頃でもあれほど傷ついたのに、私はそこにまた同じような傷を増やして恋から離れた。
大人になって、恋する勇気も失くした私に先輩と向き合える気持ちなんか持てるわけがないんだ。傷ついて何とか乗り越えたのに、また同じ人に傷ついて立ち直れる自信なんか……私にはない。
付き合っても夢じゃないかなと思う毎日で私はドキドキしっぱなしの連続。先輩の隣は落ち着かなくて、ドキドキドキドキして、好きばかりを募らせていた。そんないつまでも慣れない私を先輩は余裕な顔して見つめていて、たまにこぼされた「可愛い」なんて嘘みたいな言葉。そんな夢みたいな言葉を笑って言ってくれたっけ。
付き合って数ヶ月。やっと手を繋いで、その流れで一度軽く抱きしめられたら緊張と戸惑いで倒れかけて。それに先輩はまた笑ってくれてたけど、それから触れ合いが減ってしまった。大して触れ合いもしていないのに、ドキドキドキドキ。見つめられるだけでドキドキして、肩が触れたらドキドキして。そしてついに先輩の顔が近づいてきて初めてキスされた時、色んな意味で震えた。ドキドキがマックス、でも嬉しくて。キュンてなるほど胸がときめいて苦しくなった。好きで好きで……好きだと思った。その流れでそういう雰囲気になって……緊張とドキドキとトキメキと震えが頂点の私の身体は全然言うことを聞いてくれず、先輩も戸惑ってしまって……。
「あ〜失敗したぁ」
陽ちゃんの言葉にハッとした。セルフネイルに凝ってる陽ちゃんは指先をひらひらさせながらぼやいている。
――そう、失敗だったのだ。私と先輩は、失敗した。
初めての……セックスを。
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