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melody-14
どうして自分は先輩のアパートなんかにいるんだ。
「あ、あの」
「入って」
「無理です」
「話聞くって言ったよな?」
「部屋にお邪魔するとは言ってません!」
なに?!なんか先輩絶対こんな人じゃなかったことない?!こんな強引な……え?なに?!
「皐月、ちゃんと話したいんだよ」
「ここじゃなくてもいいですよね?」
「ここじゃダメな理由は?」
いろいろダメだろう、どうしてここでいいとなるんだ、私が聞きたい。
「先輩、もう私たち別に……きゃあ!」
「軽いな、相変わらず皐月は」
いきなり先輩に抱きあげられた。小柄な自分がますます嫌になる。高身長の先輩にあっさり抱き上げられた私は気づいたら先輩の腕の中で見下ろす立場になっていて。
(恥ずかしくて死にそう!)
「あの!先輩!お、降ろしてぇ!」
「だめ、逃がしたくない。とりあえず話しよう。全部聞いてから逃げるなり好きにしたらいい。とにかく話させて」
そう言って部屋に入れられて鍵を閉められてしまった。
「コーヒーでいい?」
「……はい」
カチャカチャとした食器の触れる音だけが部屋の中に響いてそれが無駄に緊張感を増す。招かれた部屋の中は当然先輩の香りがしてさらに緊張してしまう。シンプルで整えられた部屋の中、記憶の中でしか生き続けなかった人が目の前にいる。それにまた緊張して……「はい」マグカップを目の前に置かれて身体がビクリと強張った。
「……そんなに、緊張しないで」
申し訳なさそうに言うけれど、今さらだ。そんな顔をするならこんな強引な形を取らないでほしい。
「いただきます……」
コーヒーの良い香りがして少しだけホッとする。温かいものに触れたらじんわりと和らぐものがあった。
「お見合いって何?」
「……は?」
話したい事は何なんだろう、そう思っていたところの第一声がそれとは。予期せぬ言葉に素直に反応した私の言葉はそれだった。
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