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melody-1
アラーム音に目を覚ましてそのまま携帯をいじっていたら母からまたDMが入っているのに気づいた。
【釣書】
ここ最近定期的に送られてくるこのDM。中身はタイトル通りひねりもない釣書だ。お見合い相手の釣書である。
(そろそろ言い訳も尽きてきてるんだよな。お母さんもそれわかってばんばん送ってくるし)
いい加減諦めて実家に帰る時が来たか……あとは私の覚悟だけか。
今度のお見合い相手も地元の公務員。よくこんなに相手を見つけてこられるな、さすが地元の市役所に勤めていた母は顔が広い。未だに交友関係も続いていろんな情報を仕入れている。○○ちゃんが結婚した、△△くんはどこに勤めている(推定年収も把握)、□□ちゃんは離婚して今は◇◇くんと付き合っている……etc。実家に帰ればそんな話を山ほど聞かされて本音は聞きたくない。
自分も母の力を借りて地元でお見合いをしたらいろんな話がそこらかしこに散らばるのだろう。
恐ろしい。それでも現実、出会いがない。出会いがあったところで私には恋愛するハードルがとてつもなく高いトラウマがあってぶっちゃけ恋愛結婚は諦めていた。
家柄、性格、条件が見合ってお互い生理的に無理なものがなければ合格。確認しないといけないことはまだあるだろうけど、結婚するうえでの最低条件はこの釣書と母の見立てと母の私のプレゼンで解決されるはずだ。あとは……それは脳内にソッと置きつつ釣書を覗いてみると、地元小学校勤務の二個上とある。
(え。二個上……やだ)
年齢だけでもうこの人は却下だ。瞬間でシャッターが降りた。名前や他の情報を見るまでもない。地元が同じ二個上、それは私のトラウマを呼び起こす。
絶対に無理だ。百万もらえると言われても無理だ、なし。そう思ってDMをそっと閉じた。
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