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melody-2
恋愛したくないわけじゃないんだ、なんなら恋にずっと憧れて、彼氏だって欲しい。平日の夜の寝る前にベッドの中で電話で話したり、時間が合えば仕事の後にご飯に行ったり、休みの日は一緒に出掛けて水族館に行ったり映画を見たりしたい。季節のイベントもちゃんと楽しんで、手を繋いで歩きたい。見つめ合ってキスをして、触れあってそういうこともしたい。ちゃんと性欲だってある。それが満たされたことはないだけで。
(ただの喪女。拗らせアラサーだよ)
もうすぐ30歳目前なのにどうしたものか。男性とお付き合い経験がないわけではない。中身はさて置き「付き合おう」「はい」のくだりを交わした人は二人もいる。付き合い経験がないわけじゃないのだ、中身は置いておいてもだ。
出社への身支度を整えながら部屋の中に立てかけられた姿見で服を合わせていく。
私の身長は148センチ。小五で初潮がきてそこでぴたりと身長が止まってしまった。早いか遅いかだと平均よりは早い方か。当時でなら少し豊満な体型のせいだったのかもしれない。初潮がきたのも膨らみだした胸のせいだったのかも、そう思っていたが体型もそこからたいして大きな変化は訪れない。体重は41キロ、服はXSでも着られるがサイズ探しが面倒もあって基本はSサイズ。ネットでも小柄さん向けはたくさんあるが着てみて違うはネットあるある、年齢を重ねてくるとなおさら試着して服を買いたい。だからもっぱらSを見るようにしている。
胸はあることはあるが、水着になって喜んで晒せるかと聞かれたら無理だ。BよりのA、BまでいかないA、つまりA。巨乳の友達・ 陽ちゃんは「これから垂れていくんだよ~」と泣きべそをかいていたが、それに同意できるわけがない。なんなら大きくしたいと夜な夜な揉んでいるくらいなのに。
「男の人にいっぱい揉んでもらったらおっきくなるよぉ」
そんなハレンチなセリフを言ったって可愛いのは顔も性格も良いからか。愛される要素満載の陽ちゃんは昔からよくモテた。彼氏も切れたことがない、初カレが高校生でそれから今の彼氏は三人目。モテる割にカウント数が少ないのは長く深く付き合うタイプだから。もうすぐ今の彼氏と結婚するのかもしれない。
一緒に地元を出てきて今も近くに住んでいるからよく会っては部屋を行き来している陽ちゃんは私を一番知る親友だ。
「さっちゃんはもっと自信をもたないとだめだよ?」
そうやってずっと励まされているが年々自信は失うばかり。過去に囚われて今の自分も見失っている。
「自分に自信を持ったってどうしようもないよ。この体じゃ、誰も受け入れてなんかくれない」
「さっちゃん……」
この体が……この小さな幼児体型が……誰を受け入れられるというんだ。
私はこの体で男の人を受け入れられたことなんかないんだから。
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