Chapter.1 魔王城へ

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「う、うわあっ!?危なっ」  二段ベッドなので顔に当たりそうになり、急いで顔をカリビアの胸元へと動かした。スレスレだった。 「何すんだよ!!!」 「大丈夫だって!落ち着いてくれ」 「落ち着けるか!!」  こんな危険人物の前で落ち着けるか!……と言いたいところだが、ブーメランなのですんでのところでやめた。 「ほらこれ。鉄に見えるけど、オレの手作りベッドだから!マジックアイテムでできてるから、怪我はしない。強い衝撃を受けるとき、柔らかくなるんだ」  カリビアが近くの鉄の部分を爪でカンカンと弾く。強い衝撃ではないので、痛そうな音がするが……。 「そ、そうなのか……?」  状況が状況なので、信じかけてしまった。 「そうだ!あはは、バルディ!ここまでオレたちのことを考えてくれてたなんて。オレは嬉しいよ!」  カリビアは本当に嬉しそうに目を細める。二段ベッドの影で暗いというのもあり、さらに感じたことのない感情も相まって、時が止まったように感じた。 (Yes, it is. His time stands still. His life has come to an end. But the one forced the hands of that clock to move. He is not really him now. Where is his heart now?) 「副隊長!持ってきまし──何してんですか?」  ニコニコと良い笑顔でさっきの金髪の人が飛び込んできたかと思いきや、カリビアの姿を見て目を丸くした。忙しい人だ。 「いつものだよ」 「見ればわかる」  水色の人の言葉に、金髪の人は腰に手を当てた。あぁ、ちょっと服がぐちゃっとなる……。 「いつもの?」  オレは暗さか疲れかで眠ってしまったカリビアの手から抜け出し、立ち上がった。持ってきてもらった服を受け取って礼を言った。 「ありがとう……」 「いーのいーの!間違えて攻撃しないように、見た目も大事なのはよくわかってるからさ!」 「う、うん……」  曖昧な返答をし、残された他のメンバーを見る。彼らはカリビアをきちんと寝かせつけていた。 「……副隊長、なんかたまに人肌が恋しくなるのか、スキンシップが激しくってな。その度に悲しそうな顔をする。……まぁ軍に入る奴らなんて、腹に何か抱えた奴らばっかだからな。ま、気にしないでやってくれ」  目の前の彼は、青空のような綺麗な瞳で微笑んでいる。さっきまで敵だったのに、どうしてここまで優しくしてくれるんだろう。まず、優しくされたことなんて………………。  …………………………。 「……オレ、今まで魔王軍の仕事を増やしてきたけど……なんか、後悔してる」  増やしてたって意識はあったんだ……という目をされた。片目しか出てないけど、わかる。ジト目ってやつだ。 「い、いや、意図してやってたわけじゃないよ!二次被害ってやつ……かな。…………オレ、カリビアのこと、誤解してたかもしれない。何かしてやれないのかな?」
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