Chapter.1 魔王城へ

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 ギャアギャア騒ぐ大きな2人を、オレと残りの2人の軍人が背中を押して部屋から追い出す。もちろん、眠ること自体がレアなカリビアが寝ているからだ。  このまま騒がれてしまうと、起きてしまうかもしれない。……疲労度と比べたら、逆に目覚める方が難しいかもだけど。 「ふぅ、やっと外に出せた……。さすが軍人……大きいし力強いし……」 「……僕、深く眠れるように魔法をかけてくるね」 「わかった」  オレと同じ、水色の髪をした軍人がカリビアに魔法をかけに行く。周りは物理っぽいけど、この人は魔法で戦うのかな?だから他と比べて体を鍛えている度合いが軽いのか。……うーん、この人の魔力も超一流だ。むしろこの人以上を見たことが無い気がする。 「……迷惑、かけたな」  落ち着いたのか、少し恥ずかしそうな顔をした黒髪が話しかけてきた。背が高いので上を向く首が痛い。 「いつも迷惑をかけていたのはオレの方だよ」 「だが今日はこっちが迷惑をかけた。……調べるのにも日数がかかるだろう。これから集合の時間まで、俺たちが魔王城を案内しよう」 「ほ、本当っ?!」  思わず、目が輝いてしまった。それを見た彼は、見たことの無いような顔で微笑んだ。 「ふふふ……。あぁ、もちろんだ。いいだろ?ミゲル、シャレット、アスター!」  部屋のメンバーの名前を呼ぶ黒髪。  3人は顔を見合わせることなく、もともとそのつもりだったのか、首を縦に振った。他にも、親指を立てたり、大きな尻尾を揺らしたりと、それぞれの返事をしていた。  ……話してくれているだけでも胸がいっぱいなのに、ここまでやってくれるなんて。  ああ…………。これが最後の日だって言われても、頷いてしまうかもしれない。  それほど嬉しいことだったので、オレは気付かないうちに、ぽとり、と涙が溢れていた────。
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