12人が本棚に入れています
本棚に追加
──ふと、グドーが足を止める。軍の人たちの部屋まで戻ってきて、探索が続いていたけど……なんかここだけ違う部屋のようだ。
「ここは?」
「子供部屋だ」
「オレは子供じゃないっ!」
まさかここに泊まらせる気じゃないだろうか?!
「わかっている。ここは魔王の子供たちが使っている部屋だ」
「え?こ、こんなとこにあるんだ?」
違うと安心したオレは中を覗く。
カーペットの上には、積み木や絵本などが揃っており、小さな滑り台もあった。何もかもが小さく、本当に子供部屋という感じがした。今は誰もいない。
「『たのしいまほう』『たびするうえきばち』『雷魔法の基本と応用』……。なんか違うの混ざってるんだけど……」
「娘のライル嬢が勤勉なんだ。植木鉢のは命について学ぶためらしい」
シャレットがほらよ、と示す。
栞代わりなのか、葉っぱがいくつも挟まっていた。
「……。こんなもの、オレに見せて何だって言うの?」
「調べものをするって言うんだからさ、一番いい方法を示してるだけだ」
「ええ?………………もしかして……。魔王の娘に聞けって?」
オレがシャレットの方を見る。シャレットの顔には、どんどん笑顔が生まれていった。
「ピィンポォーン!!正解〜!正解したバルディくんにはぁ〜」
ニマニマしたシャレットが近づいてくる。高身長が子供サイズのオレに影を落とす。オレは思わずたじろいだ。
「な、なに……」
「オレたちが、お前の調べものを手伝うっていう景品をあげちゃいまーす!」
「……………………」
「……………………」
「………………は?」
シャレット以外がポカーンと口を開けて固まる。当然オレもだ。
シャレットは人差し指を立てたまま、「あれっ?リアクション無し?」と悲しそうな顔をした。
「…………え?手伝って……くれるの?」
呆然としたまま、どうにか返事をしなきゃ、と頑張って言葉をひねり出す。シャレットは返事が返ってきたのが嬉しかったのか、すぐに言葉を返した。
「当然!まだ同じ釜の飯も食ってないし、一緒に寝たり訓練したりもしてないけどさ、オレたちは友達だろ!友達の手伝いをするのは当然のことだ!な、3人とも!」
シャレットはオレの肩に手を回し、ニコニコと笑った。そしてそのまま残りの3人を見る。3人は顔を見合わせ、シャレットの方を見た。
「……しょうがない。こうなったら折れないもんな。シャレット、お前といたら退屈しないよ」
……と、グドーが腰に手を当てながら微笑む。
「僕も、妹の頼みを消化したいし。いいよ」
「2人が行くなら……」
ミゲル、アスターも首を縦に振る。ミゲル、妹いたんだ。
「へへっ!やっぱ、持つべきものは友達だよな!」
ニカッ!と笑ったシャレットは、まるで太陽のようだった。
最初のコメントを投稿しよう!