Chapter.2 楽しい時間

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 しばらくして、ついに目的地である図書館に到着した。中に入ってみたが、どう見ても部屋の中と外で大きさが違う。  ここで、最初とは違い、列の先頭がシャレットに変わった。 「ここが図書館だ!」 「おぉ……!おっきい……!」 「エメスにある学校の図書館といい勝負だからね」  感嘆の声を上げるオレにミゲルが話しかけてきた。一番勉強してそうな彼の方がよく知っていそうだ。  全体的にグレーだが、蔵書が多すぎてグレーに飽和してしまったのか遠くが見えない。  これ……全部探すの?えぇ…………。 「エメスにも図書館があるんだ……」 「でもこっちを選んだから、オレたちとの出会いがあったってわけだろ?はは、嬉しいだろ?オレは嬉しいぜ!」  シャレットがうんうん!と満足そうにしている。 「うん。ずっと一人で生きてきたから、誰かと一緒にいるっていうことがどんな感じかってのもわかったし、迷惑をかけていたカリビアの苦労もわかって、大収穫だよ!」 「お前……一人だったのか?」  ずっと口を閉ざしていたアスターが驚いて問いかけてきた。  そうだ。オレは『ドラゴンソウル』だからってのけ者にされてきた。まるで病原菌かのように虐げられてきたんだ。 「でも……今はみんながいてくれる……でしょ?」  周りが大きいからか、自然と甘えるような感じになってしまう。  ──オレが?他人に甘える?冗談じゃない!オレは──オレは、ドラゴンソウルについて調べて、一人に戻るんだ。一度ヒトの温かさを知ったら────戻れなくなるじゃないか。  なに自分でバカなことを。  ……バカな、ことを──。  …………………………。 「そんなの、当たり前だろ!」  シャレットの一声に周りのみんなが頷いた。 「当たり前……?だってみんな、カリビアの命令でイヤイヤ────」 「違う!」 「!!」  オレは泣きそうになった。 「オレたち魔王軍は戦いに勝つことも大切だけど、それよりも命を第一にしている。もし一人で破滅に向かおうとするんだったら、オレが絶対に許さない」  シャレットはスッと目を細め、怖い顔をした。 「お前の命は、お前だけのものじゃない」  ──────!! 「シャレット……。うぅ、シャレットぉ……!」  オレはシャレットの大きな体に飛びついて泣いた。今まで我慢してきたものが全部こみ上げてきた。  こんな風に誰かに相談したこと、あるわけない。  優しい声で話しかけられたことも、ない。  誰かの前で泣いたことも……ない。 「まったく……」  体が震えて、涙が止まらない。シャレットが優しく頭を撫でるなか、オレは袖で涙を拭った。
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