Chapter.2 楽しい時間

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 ……長机には、たくさんの椅子が並べられている。食堂というくらいなので人がたくさん集まるところだ。座っているオレの真後ろにはまた別の軍人が座っている。しかも長机の真ん中あたりに座らされたので逃げ場がない。 「何食べる?ま、料理と言える料理は少ないけどな。料理の概念はつい最近入ってきたばかりらしいからさ」 「へぇ……」  グドーが説明してくれている。今後、また木の実生活に戻るというのに、そんなことを教えられても……。  そんなことを考えていると、 「いっただっきまーす!」  ……と、シャレットがオレの前に座って元気に手を合わせた。もうお盆を持ってきている。いつの間に誰が用意したのだろうか。 「〜♪」 「シャレット、そんなに勢いよく……!まったく、喉詰まらせるなよ」  グドーが焦るほどの勢いの割には意外と上品に食べるなぁ……。白くて太い糸みたいなのを食べてる。 「バルディ。オレと同じものを持ってきた」  カリビアがお盆を2つ持ってきた。器用だ。 「あ、ありがとう……」  衣で包まれた茶色い小判の形のものが2つ。こんもりと盛り付けられた白い塊。そして植物が切り刻まれたものが、目の前に置かれる。  ……うう、いいにおいはするけど……。これ……食べられるのか? 「グドー、バルディを見ててくれてありがとう」 「いえ、当然のことをしたまでです。俺も取ってきますね」 「行ってらっしゃい」  グドーは立ち去り、カリビアはオレの隣に座った。  グドーは最初は怖い人だったけど、今はもう慣れちゃった。むしろ優しい側面が強すぎる。 「カリビア……。これは?」  オレはおそるおそる聞いてみる。今更だが、カリビアはここの人たちにとって目上の存在だ。ここに来て時間が経って、どんな対応をされているのかを見ていたら、その実感が湧いてきてしまった。 「ん?それは『コロッケ定食』というらしい。誰が名付けたんだろうな」  そう言いながらカリビアはほぼ黒い液体を小判の形のやつにかける。ツンとしたにおいにビックリしてガタ!と音を立てた。 「!!!!!」 「すごいにおいだよな。はは、ビックリした顔!目に焼き付けておくよ」  お盆を手に戻ってきたグドーは左隣に座った。オレを見てニヤニヤしながら何かが混ざった茶色い塊を口にしている。形は目の前の白い山と同じだけど、何かが違うようだ。今の時点で3種類あるけど、どこが『少ない』のだろうか。 「う、ううう……」  今になって、食べ物が怖くなってきた……!なんでこんなにクセの強い食べ物ばっかりあるの!?体現してる?!ねぇ、ここの人たちを体現してるよね!? 「バルディ、遠慮するな。それとも食べさせてほしいのか?」 「こ、子供じゃないって言ってるだろ!」 「そう言って最後まで食べないつもりでしょ」 「うっ……」  こちらから見てシャレットの左隣に座っているミゲルが鋭いツッコミをかます。  彼は少なめの白い山と、汁物だった。 「………………」  ……とは言ったものの、なかなか手をつけられない。オレは茶色い丸とにらめっこしていた。 「……もしかして、食べたことなくて……怖い?」 「!!!」  ドキッ!と心臓が跳ね上がる。ここに来てからそういうのが多くて体がもたない。 「俺も同じだったから。昔は魔獣みたいな生活してたからさ。だからよくわかる」  あはは、と笑うアスター。  そんな彼の前には大量の料理がある。これ全部食べるの?なんでこの量?大食い選手?気になって話が頭に入らないんだけど。 「無理しなくて大丈夫だから。食べて死ぬことはないよ。怖いものじゃない」 「…………うん……」  ミゲルが背中を押してくれる。ミゲルが言うなら、ちょっとやってみようかな?
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