Chapter.1 魔王城へ

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 そう、オレの名前はバルディ。ただのバルディだ。 「こんなところに何しに来た!」  彼は飛べないのか、地上から叫ぶ。もしかしてオレの言葉が聞こえなかった? 「…………」  オレは地上に降りる。  素直なオレを見て、カリビアは驚いた。 「降りてくるんだな」 「別にいざこざをしに来たわけじゃないし」  オレは砂色のマントを持ち、バサリと音を立てた。もちろん威嚇のため、わざとだ。 「………………」 「………………」  オレとカリビアは互いに睨み合う。  カリビアは誇り高き『魔王軍』としてこの城を守るため、外に出てきたのだろう。そんな彼からすると、あちこちで面倒ごとを起こしているオレが、城にイタズラをしに来たのだと思うのは当たり前のことだ。  しかし本当に何かをしに来たわけではない。むしろ力を貸してほしいから来ただけだ。……敵対している相手に力を貸してくれるほど優しくないのだろうとは思うけど、少しくらいは………………どうなんだろう? 「……何かをしに来たのではなさそうだな。いいだろう、好きにするといい」  カリビアは思った通りの言葉を呟き、城に戻ろうとした。 「待って!……ひとつ、頼みがある」  オレは『副隊長』であるカリビアに怯まず、一歩前に出る。許しは得たものの、いつでもお前を殺すことはできるぞ、というオーラはバチバチに感じ取れている。なので下手に出た。 「……なんだ?」  カリビアのリボンで結ばれた茶髪が揺れる。  いつも余裕が無かったのであまり見ることができなかったが、服装は何やら豪華な雰囲気だ。いつも見てきた青い服とは違うが、恐らくこれも軍服だ。副隊長専用ってやつなのだろうか。 「………………」 「何だ、その目は」  服をじーっと見ていたのがバレた。 「ああ、いや……。コホン。図書館に入らせてほしい」 「何か調べものか?」 「お前たち魔王軍にも利益がある話だと思うんだけど」 「────ほう?」  不敵な笑みを浮かべて話すが、内心ビクビクだ。何せ、オレは丸腰。それに比べ、カリビア・プルトは────  ──通称、『武器の魔神』。  魔界のはみ出し者のオレでさえ、魔界で光り輝く魔王軍の情報を知っている。しかも『噂の副隊長』となればなおさらだ。  ヤツは魔法で数多の武器を召喚することができ、まるで自分の手足のように一度に何本も動かすことができる。さっき飛んできた槍だってそうだ。槍自体には全く魔力を感じられなかったが、きっと本人はとてつもない魔力を秘めているに違いない。 (Not! No, No!! He had no magic power at all. Rather, he was a human being . But now no one thinks he is human at all. Because if he were gone, no one would be able to protect this world. We cannot let him go. That is why we have to keep an eye on him.) 「……わかった。ついてこい。だが…………」  オレに背を向け、城に向かおうとしたカリビアが振り向く。 「壊すなよ」  思っていたのとは違う言葉に、オレは一瞬フリーズした。 「────あ、ああ。当然だ。感謝する」
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