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「はあっ、はあっ……!速い……」
さすが魔王軍だ。しかも副隊長。足が速すぎて、よくある後ろに砂埃が舞っているという表現が実在するんじゃないか?と目を疑った。腕を掴まれていなければ、とっくの昔に見失っていただろう。
「ど、どこに行くんだよ!?」
「オレの部屋っ!」
居住エリアに到着し、カリビアはそのまま中に入る。オレはさすがに入ろうとは思えず、外から覗いてみることにした。
中では4人の男がトランプで遊んでいた。
一番大きい人。色白で、黒い髪をショートにしている。黒髪は珍しいので、一番最初に目に入った。そして暗闇でも光りそうな、琥珀のような色の目をしている。珍しい……。うん、本当に珍しい人だ。
2人目はオレと同じ水色の髪の人で、頭が良さそうだし、話しかけやすそうだ。この中では一番背が低いみたいだ。もちろんオレやカリビアよりかは高いが……。
その隣には少し長い金髪を左肩辺りで縛っている、お調子者っぽい人が。一番ニコニコしていて、明るそうだが……どうだろう?この人もいざとなれば襲いかかってくるのだろうか?
最後の4人目は、大きな赤いモフモフ尻尾が特徴的な人。……あいつも『ドラゴンソウル』なのか?動物の耳が生えてるぞ。でも、ドラゴンソウルは無理矢理別の種族にくっつけるみたいな見た目をしてるし……。ということは、彼は獣人なのだろうか。獣人は毛の色が統一されているため、耳も尻尾も髪も全部赤色だ。
「ふ、副隊長!!」
「もう戻ってきたんですね……。なんか早くないっすか?もうちょっと遊べると思ったのに……」
「シャ、シャレット!」
「わかってるって!だいじょーぶ、だいじょーぶ!」
一人の声に反応し、全員が立ち上がる。カリビアは「まぁまぁ、座れよ」と笑った。
……それを、オレは引き続き扉の横から覗き込むように見ていた。
「すごい……。カリビアって、本当に慕われてるんだなぁ……」
「ん?お前……。お前は!?」
一番大きい軍人がオレに気づき、格闘家のようなポーズを取った。黒い稲妻が彼の手の周りでバチバチと音を鳴らす。
──何だ、この異様な魔力は……。こんなのを当てられたら、オレ、黒焦げどころじゃ済まないかも!?
……と思っていると、強いだろうと思っていた彼の手を、カリビアは片手で制す。
「副隊長!そいつはっ」
オレのことを資料かどこかで見たのか、記憶には無いけど戦ったことがあるのか。彼は危険な奴だと警鐘を鳴らし続けている。とても真面目な人なのだろうけど……。いろんな意味でちょっと怖い。
「待て待て。さっき彼の目的を聞いた。結果、彼には一時、魔王城に滞在してもらうことにした」
「「え?」」
オレと軍人がポカーンと口を開けた。
────直後。
「「え゛ええええええッ!?」」
当たり前の合唱が、お昼過ぎの魔王城に響き渡った。
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