第1話

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 彼女は僕の家に転がりこんでおいて、女友達を呼んだ。そのコは彼氏の平常時のちんこを「ヤクルトみてーんだ」と酷い訛りで罵った。そういえば彼女と付き合う前もバンド仲間づてに暴走族の女どもに上がり込まれた事があり、若くして擦れたチーママみたいな小女に「ボーカル」呼ばわりされた挙げ句「シコってばっかりいんじゃねーの?」と何度も言われた。そういう下品な女は嫌いだ。嫌いな女の中でまた特別嫌いなんだから、だいぶだ。僕のだらしない優しさは、当時から存分に発揮されていた。  けれども彼女とふたり夜に手を繋いで、国道50号が宇都宮線を跨ぐ跨線橋脇の階段を越えてTSUTAYAに行く時。うきうきした。彼女が好きだった。彼女は酷く訛っていたけど、下品な女どもとは違うと思った。ひとつ年上だった事も甘ったれな僕には良かったのかもしれない。彼女は美容師になると言ってバイト先を辞めた。僕はまるで新婚の旦那さんみたいに、彼女が待つ家に帰る為に張り切って働いた。
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