18人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
承
「今日は直帰します、と」
小腹の空く19時頃。
帰りの電車で部内グループにメッセージを打つ。
即座に比芽からスタンプが返ってくる。
そうだ、思い出した。
あの子がくれたゼリーでも飲もう。
口を捻り、流動食のそれを飲む。
にしても今日はやけに情報量の多い1日だった。
先輩の不審死に、石神さんの一言。
『"つかれ"には気をつけてください』
確かに、この数ヶ月は心労が多かった。
比芽の嶋根先輩への愚痴を毎日聞いたり、その嶋根先輩から猛烈なアタックを喰らったり。
果ては、満員電車での急な立ちくらみを度々経験して。
社会人になって2年の間に、心身ともに衰えたのだろうか?
そんなことを考えずにいられない。
そうだ、先週も飲み会の帰りにタクシーで気分を悪く……。
そこまで考えたところで、急に視界が歪む。
息は苦しく、手足が痺れ、先ほどまで感じていた空腹が何倍にも感じる。
今までの立ちくらみのそれとは違う!
あまりにも重いその症状に、脳内がパニックに陥る。
呼吸が苦しい。次の駅で最寄りだ。
駅を降りて、家までゆらりゆらりと揺れながらも必死に歩く。
どんどんと脳が、体が痺れていく。
ー”ヒダル神”……かー
晴知の言葉が脳裏に響く。
鋭敏化した空腹に、呼吸してもできない息苦しさと全身が動けなくなりそうな痺れ。
これが先輩に憑いていたヒダル神、なの?
頭の中に、今日の情報が錯綜しパニックになる。
部屋の鍵を開けた瞬間、聖菜の意識は途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!