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転
……。目を覚ますと、そこは石神の車内だった。
辺りを見渡すと、どうやら嶋根先輩の家だ。
よく見ると警察が出入りしている。
不審死として捜査をしているのだろう。
石神は運転席で、なにかメモを書いている。
「おや、起きましたか。
訳あって外出時に眠らせましたが、今は息苦しくないですか?」
なぜ今そんな質問をするのだろう。
空腹も痺れも、息が詰まる感覚もない。
当然のことだ。
「だ、大丈夫です」
「なら車移動は問題なし、命拾いしましたね」
その言葉の真意はさっぱりと分からない。
でも、ぶっきらぼうながら優しい言葉には不思議と勇気づけられる気がした。
「では、少し警察にお話を伺いましょう。
私の予想が正しければ、嶋根さんをとり殺した妖怪たちの痕跡があります」
「妖怪も証拠を残すんですか?」
聖菜の疑問に答えもせず、メモを書き終えた石神は車を降りる。
「こんばんわ、秀秋さん」
"小川"と書かれた、筋骨溢れる刑事がこちらに気づく。
「おお、石神先生!この前の連続放火事件はありがとうございました。
まさか、本人すら自覚がなかったとは」
「いえいえ。僕は患者の憑き物を祓った。
その結果、たまたま正体が放火魔だっただけです」
数々の事件に協力しているためか、石神は警察関係者とも親しいようだ。
どこまで顔のきく男なのだろうか。
「さて、本題ですが。
この家から”コレ”と"コレ"は見つかりましたか?」
先ほど書いていたメモを見せる。
「ありましたがそれが一体?」
「付着した成分を分析してください。下記の成分が検出されるはずです」
「ハイ!ところで、そちらのお嬢さんは?」
「宇佐美聖菜です。嶋根さんの会社の後輩です」
「そして殺されかけた被害者ですよ」
殺されかけた?何を言っているのだろう。
嶋根先輩の死と私が取り憑かれたことに関係があるのだろうか。
再び情報量に脳が負け、パニックになる。
「それはそれは。刑事の小川秀秋と申します。
後ほど事情聴取でもお会いするでしょう、よろしくお願いします」
「さて、挨拶もそこそこに足早に次にいきましょう。
貴女に憑いたそれを祓うために」
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