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午後9時。仕事を終えた比芽は帰宅した。 先輩は今頃どうなっているだろう。 きっと苦しんでいるに違いない。 身近で死を経験して、今度は自分が同じように息もできず外出もできない。 食事も息も出来ずに死んでいく恐怖を、じわじわ感じていることだろう。 ピンポーン。 こんな時間に来客? 怪訝に思いつつインターホンを見ると、そこには…… 「せ、先輩!体調は大丈夫なんですか!?」 「大丈夫、よ。少しお話は大丈夫?」 「わかりました、今開けますね」 ロックを解除し、扉を開ける。 間違いなくそこには聖菜が、青い顔をして立っている。 が、その瞬間見知らぬ男がずいと影から出てきた。 グラスチェーンの眼鏡に端正に整った顔。 その目つきは鋭く、そして不機嫌そうだ。 「失礼」 そう言うと、比芽を力強く壁際にどかし、ずかずかと比芽の家に乗り込んだ。 後ろからおずおずと聖菜がついていく。 「何ですか!警察を呼びますよ!」 「呼べるなら呼びたまえ」 掴みかかる比芽を力強く引き剥がす。 そして全く比芽を見ずに、キッチンや棚を開けては家探しをし続ける。 洗面台、お風呂、クローゼット。 女性一人のプライベートなどお構いなしだ。 その間、聖菜は比芽をじっと見続けている。 まるで哀れな何かを見るような、憐憫の入り混じった視線だ。 家探しが進むにつれて、恐怖が比芽の顔に広がる。 そして 「あった。この小瓶だ」 小瓶の匂いを嗅ぎ、確信する。 ずっと黙っていた聖菜が耐えられず口を開く。 「そろそろ教えて下さい、石神さん。 嶋根先輩の死因と、私の身に起きたこと。 そして私に憑いたヒダル神のことを!」 限界だ。 張り詰めた緊張感と異常な光景に、パニックになってしまい大声を上げる。 「君や嶋根さんに憑いているものはそんなもんじゃない。 確かにヒダル神は、。 だが、本当に憑いていたのは」 眼鏡をくいとあげ、直後に 「”橋姫”。この事件の犯人だ」 比芽を指差し、事件を覆う真なる妖怪の名を告げだ。
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