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「神が見えるとは、あなたは何者ですか?」
「あ、いえ、えっと。以前、咲耶姫様とお会いしたことがあって……」
私は記憶の片隅に大切にしまってある二年前のことを思い出す。するとその女性は「まあ!」と身を乗り出した。
「私は咲耶姫のところへ行く途中だったのです」
「えっ! そうなんですか?!」
「私の名は千々姫と申します」
「ちぢひめさま?」
その女性、千々姫様は咲耶姫様の元へ行く途中、空からいつもと違うキラキラとした街の様子に興味を持って下界へ降りてきたらしい。そしてイルミネーションに目を奪われながら歩いていたところ、うちの花屋の店先に飾られたクリスマスリースとツリーの可愛さに釘付けになったとか。
「せっかくなのでプレゼントしますよ」
「まあ、いいのですか?」
「はい、ちょっとお待ちいただけますか?」
キラキラと目を輝かせる千々姫様が可愛らしい。この神様は咲耶姫様とはまた違った雰囲気を持っているが、咲耶姫様同様とても綺麗な神様だ。
店長に許しを請うべく店内へ戻ると、店長は店の奥の方で「どうだった?」と及び腰になりながら問う。
「なんかクリスマスリースとツリーを気に入って見入っていたみたいです」
「憑りつかれているの?」
「いえ、そういうわけではないです。私、リースとツリー買いますね」
「やだ、あげるわよ。どうせもうクリスマスも終わりなんだから。あげるから店に憑りつかないようにお願いしておいて」
「憑りつくって……。いや、大丈夫ですよ?」
「いいからいいから。それで望月さんは明日は休みでいいから、ちゃんとお祓いしてきなさい。絶対よ!」
店長の凄みに負けて、私は大人しく「はあい」と返事をしておいた。
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