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◇
「お待たせしました。リースとツリー、千々姫様にプレゼントします」
「ありがとう。こんなに素敵なものをいただけるなんて」
「それから、これを咲耶姫様にお渡しいただきたいのですが」
私はポインセチアの鉢を差し出す。ポインセチアは真っ赤な花がクリスマスを演出してくれるこの時季人気の花だ。
「クリスマスプレゼントです」
「くりすますぷれぜんと? くりすますという花の名前ですか?」
「えっ? ……もしかして千々姫様、クリスマスを知らないのですか?」
「はい、知りません」
「あー……」
イエスキリストも神として崇められているけれど、確かに日本の神様と親交はなさそうだ。というか、そちらはまた別次元のものなのかもしれない。
「クリスマスというのはですね、イエスキリストの誕生を祝う日でして。ああ、でも別に多くの日本人はそれにあやかってワイワイ騒いでいるだけというか。子供たちはサンタクロースからのプレゼントを心待ちにしていて、家ではケーキを食べたりとか……うーん、説明難しいです」
「なるほど。街がキラキラとしているのはそのためだったのですね」
「そうなんです。イルミネーション綺麗ですよね。千々姫様は空から眺めたんでしょう? いいなぁ」
神様の足を止めるほどの綺麗なイルミネーション。空から街を眺めたらどんなに素敵な光景なのだろうか。毎年クリスマスは仕事の私。イルミネーションだって、仕事終わりの帰り道に少し見て終わり。それでも綺麗だなと思うのだから、空からだったらもっともっとすごいのだろう。
私は想像して幸せな気分になった。
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