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◇
「さあ、着きましたよ」
「ありがとうございます」
空飛ぶ布から降りるとそこは神社の境内で、私は辺りを見回す。石灯篭が建ち並び、本殿の前には賽銭箱と鈴。何度探しても見つけられなかった咲耶姫様の神社だ。
「すごいっ!」
感動のあまり思わず目を潤ませていると、ふいに奥から人の気配がした。
「千々姫、来たのか」
凛として透明感のある声。それは一気にあの日の記憶を鮮明に甦らせる。
「はい、咲耶姫」
千々姫様が答えるのと同時に目の前に現れたのは、二年前と何ら変わらない美しい咲耶姫様だった。
私は体の奥からわき上がる喜びにうち震える。
「咲耶姫様」
「そなた、アオイ。アオイではないか!」
咲耶姫様も驚いた様子で声を上げた。
「どうしたのだ? また迷ったのか? なぜ千々姫と一緒に?」
「千々姫様とは偶然にお会いしてご親切に連れてきてもらいました。それで、今日はこれをお届けに。咲耶姫様にクリスマスプレゼントです」
私はポインセチアの鉢植えを差し出す。
「くりすます? 一体何のことだ?」
「あ、咲耶姫様もクリスマス知らないんですね」
少し前の千々姫様とのやり取りを思い出して私はふふふと笑った。
「咲耶姫、見てください。これがクリスマスリースでこれがクリスマスツリーです。可愛いでしょう。アオイがくれたのですよ」
「ほう」
「咲耶姫様、クリスマスというのはですね、イエスキリストの誕生を祝う日なのですが、私たちはそれにあやかってケーキを食べたりチキンを食べたりプレゼントをもらったりと楽しく過ごす日です」
「なるほど。それでこの花を私に贈ってくれたのだな」
咲耶姫様はポインセチアを胸に抱えると嬉しそうに目を細める。
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