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キャイキャイと騒いでいると突然襖がガタガタと揺れる。そしてパァーンッと開いたかと思うと熱い男性が仁王立ちして叫んだ。
「俺の咲耶姫に触るなぁ!」
「だからいつもいきなり開けるなと言っておろうに!」
ギャアギャアと言い合いを始める二人に、私は感激で胸がいっぱいになった。あの時とまったく変わっていない、逞しく熱い男の神様。
「火の神様!」
「暑苦しいですね」
感激の声を上げる私とは対照的に、千々姫様は冷静に呟いた。
「お前、アオイか?」
「はい、火の神様お久しぶりです」
「ふうん」
火の神様は私を上から下まで撫で回すように見るとふんと鼻で笑う。
「二年ぶりくらいかと思うが、変わらんな」
「どういう意味ですかそれは」
「それよりなんだ、千々姫か」
「なんだとはなんですか。織物を持ってきたのですよ」
千々姫様は先程の綺麗な布を咲耶姫様に試着させるように押し当てる。真っ白な生地に金色の刺繍がキラキラと輝き、咲耶姫様の美人顔をより一層引き立たせた。
「やはり咲耶姫は美しいですね。私の見立ては間違っていないようです」
「本当に、すごく綺麗です。ね、火の神様!」
火の神様を見れば、その場に立ち尽くしてぼんやりとしている。
「どうした、火の神よ」
咲耶姫様が不思議そうに首を傾げると、火の神様は咲耶姫様の手を取り優しく口づけをする。
「美しすぎる。今すぐお前を抱きたい」
火の神様はもう咲耶姫様しか見えていないようで、私と千々姫様は蚊帳の外だ。こうなると咲耶姫様もまわりが見えなくなるタイプで頬をピンクに染めながら火の神を見つめている。
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