月夜の晩、神様に出会う

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「アオイ、礼を言う。今宵はそなたと出会えてよかった」 「こちらこそ、月読様とお話しできて嬉しかったです。あの、また来てもいいですか?」 「ああ、また話し相手になっておくれ」 ふわりと微笑む月読様の足下で、ハハコグサが優しく揺れた。とても幻想的な情景はまるで異世界のようで胸がきゅっと熱くなる。 「夜道は危険だ。お主が無事に帰れるよう見守ってやろう。ああ、あと明日の結婚式は雨が降らぬよう空の神に伝えておく」 「そんなことができるんですか?」 「それくらいならな。アオイの装花が青空に映えると良いな」 「ありがとうございます」 名残惜しさを感じながら石段をゆっくりと下りていく。来たときと同じく薄暗い。なのに怖さも危うさも感じない。 真っ暗な道をヘッドライトの明かりだけで進む。 街に下りるまで、まるで異空間を通ってきたのではないかと思うほど滑らかな道程だった。 ラジオからは明日の天気予報が流れる。 『明日は移動性高気圧が張り出しよく晴れる見込みです。予想していた午前中の雨は、夜から未明にずれ込むでしょう――』 「月読様、仕事早っ」 私はひとり、ふふふと微笑む。 青空のなか結婚式が執り行われる光景を想像すると幸せな気持ちになる。美しい花たちが華やかに演出し、新郎新婦を祝福する引き立て役になってくれるだろう。 車を降りれば冷たい風などどこ吹く風。 明日も晴れだと言わんばかりに、藍色の空に月が輝く。 夜空を見上げながら月読様を想う。 いつかまた、会えるだろうか。 ふわりと甘い香りが鼻を掠める。 白檀の香り。 月読様の香り。 瞬間、胸が震えた――。
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