神様の見える人

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レジの横にお花を配送するための案内カウンターがある。そこに、私を指名した男性が凛とした佇まいで立っていた。年格好は私と同じか二十代後半くらいだろうか。 「お待たせして申し訳ありません」 声をかけると、彼は静かに顔を上げる。 長い睫毛に縁取られた瞳が私を捉えると、ほんのりと目尻を落とした。 店長が興奮するイケメンというよりは、どことなく憂いを帯びた線の細い綺麗な男性。(まあ、イケメンには違いないのだけど) 「望月(もちづき)と申します。どのようなご用件でしょうか」 椅子に座るよう促しながら、ネームプレートを提示する。どう考えても彼と知り合いではないから、私への指名は間違いなんじゃないかと思ったのだけど――。 瞬間、ほのかに甘い香りが鼻をかすめた。 これは……白檀の香り? 「斉賀透(さいがとおる)といいます。突然訪ねてすみません。望月さんのお話は、常々聞いております」 「えっと……?」 初対面なのにまるで知っているかのように話されてドキリとする。意味がわからず目をパチクリさせる私に、斉賀さんはニッコリと微笑んだ。そして少し声を潜める。 「咲耶姫様をご存知ですよね?」 「えっ!」 思わず大きな声がでてしまい、慌てて口元を押さえる。 咲耶姫様は以前山の中で出会った神様だ。人と話すのは何千年ぶりかと言っていた。そんな咲耶姫様を知っている斉賀さんは何者なのだろう。 「……斉賀さんは神様ですか?」 そうだとしか思えなくてそう言ったのに、斉賀さんは可笑しそうにくすりと笑って「いいえ」と否定した。
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