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翌日、指定された住所へ赴いた私は、あっと息を飲んだ。
小高い丘の上に大きな鳥居が二つ。
ここは、以前訪れたことがある。
「月読様の神社だ……」
一つ目の鳥居をくぐって二つ目の鳥居に向かって階段を上っていく。両脇には青々とした木々と草花が風に揺れる。澄んだ空気が肌を撫でていく。
階段を上りきったところで、白衣に紫色の袴を身に纏った男性が待っていた。その姿は、月読様を彷彿とさせる。
「ようこそおいでくださいました、望月さん」
「……斉賀さん?」
「はい、この神社の神主をしています」
「あっ、そうだったんですか! びっくりしました。一瞬、月読様かと思っちゃいました」
斉賀さんはキョトンとしたあと、ふっと静かな笑みを漏らす。そんな仕草さえ、月読様に似ていると思った。それに、ほのかに鼻をかすめる白檀の香り。そうだ、以前、月読様に出会ったときも、白檀の香りがしたんだった。
「月読様じゃないですよね?」
「望月さんは月読様にもお会いしたことがあるんですか?」
「はい、一度だけ」
「すごいですね。子供の頃から神様が見えるんですか?」
「いいえ。大人になってから何度か神様にお会いする機会があっただけで……。というか、どうして神様が見えるのかもわかりませんけど」
「怖くないですか?」
「怖くはないですね。むしろ面白いというか。あっ、面白いなんて失礼ですよね」
「ははっ、良いと思います」
とんだ失言かと思ったけれど、斉賀さんはくくっと楽しそうに笑ってくれたのでほっと胸を撫で下ろす。
「ではこちらに」
「はい、お邪魔します」
斉賀さんの後に続いて境内へ入っていく。月読様に会った日は夜だったから、昼間の神社はなんだか雰囲気が違った。
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