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「月読様?」
「なにやら騒がしいと思ったら、そなたアオイか」
「わあ、お久しぶりです」
「相変わらず元気そうだな。なんだ、透に連れ込まれたのか?」
「はっ?」
「人聞きの悪いことを言わないでください。咲耶姫様の結婚式のことで、望月さんに相談していただけです」
斉賀さんが説明してくれるも、月読様は「ふうん」と顎を撫でた。そしてニヤリと笑う。
「そのわりに、透、嬉しそうだな」
「は、なにを……」
「いつもムスッとしているお前が笑っているのを見られて安心した」
私は斉賀さんを見る。斉賀さんは出会ったときから優しい笑みを浮かべる人だった。ムスッとだなんて想像がつかないのだけど……と思ったけれど、そう月読様に指摘された斉賀さんはムスッとしていた。ほのかに耳が赤い。もしや、照れている?
月読様と斉賀さんのやり取りをじっと見ていると、ふいに斉賀さんと目が合う。
「……嬉しいのは事実です。以前、月読様から、人としゃべったと聞いていましたので、どんな方か興味がありました」
「あれ? 月読様、人と話すのは何百年ぶりとか言ってませんでしたっけ? やっぱり斉賀さんは人ではなく神様なんじゃ……」
「まさか、人ですよ」
「透は人だ。ただし、ほんの少し神の血が混じっている。だから、透は人として数えないのだよ」
「ん? それはどういう……? 神主さんだから、とか?」
月読様は斉賀さんの隣に音もなく腰を下ろす。
二人、静かな雰囲気がとても良く似ている。どこか儚げで線が細くて、とても綺麗な顔立ち。
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