神様の見える人

9/10
前へ
/79ページ
次へ
「ゆっくりしていくといい」 「ありがとうございます。ゆっくりしたいですけど、仕事中なので」 「とはいえ、少し休憩しましょうか。お茶でも淹れますね」 斉賀さんはすっと立ち上がると、奥へ消えていく。そんな姿さえ、月読様に似ていると思った。 「お二人は似ていますよね。雰囲気……なのかな?」 「そうであろうか? 私はあやつほどムスッとしておらぬ」 「ぷっ、そうですかぁ?」 「透は友がおらぬゆえ、アオイが友になってはくれぬか」 「え? それは全然いいですけど」 月読様と話をしていると、斉賀さんがムスッとしながらお茶をお盆に乗せて持ってくる。 「僕にだって友達くらい、います」 「そうか。いつも寂しそうではないか」 「それは月読様でしょう? 望月さんとまたお話したいとおっしゃっていましたよね」 「……むぅ」 お二人の言い合いが面白くて、私の頬は勝手に緩む。 神様と、神様の血が混じっている斉賀さんと、神様が見える私。どんな巡り合わせなのだろう。素敵な出会いに感謝しかない。 気づけば外は夕暮れ時。 すっかり夏の暑さもなくなり秋めいてきた。日が傾くのも随分と早くなったように感じられる。 「斉賀さん、今日はお時間いただきありがとうございました。お見積り作成したらまたご連絡します」 「こちらこそ、ご足労いただきありがとうございました」 丁寧な挨拶を返してくれる斉賀さんは、秋の夕日に照らされてキラキラと輝く。まるで神様の存在かのように美しく見えて、しばらく見とれてしまった。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加