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「ゆっくりしていくといい」
「ありがとうございます。ゆっくりしたいですけど、仕事中なので」
「とはいえ、少し休憩しましょうか。お茶でも淹れますね」
斉賀さんはすっと立ち上がると、奥へ消えていく。そんな姿さえ、月読様に似ていると思った。
「お二人は似ていますよね。雰囲気……なのかな?」
「そうであろうか? 私はあやつほどムスッとしておらぬ」
「ぷっ、そうですかぁ?」
「透は友がおらぬゆえ、アオイが友になってはくれぬか」
「え? それは全然いいですけど」
月読様と話をしていると、斉賀さんがムスッとしながらお茶をお盆に乗せて持ってくる。
「僕にだって友達くらい、います」
「そうか。いつも寂しそうではないか」
「それは月読様でしょう? 望月さんとまたお話したいとおっしゃっていましたよね」
「……むぅ」
お二人の言い合いが面白くて、私の頬は勝手に緩む。
神様と、神様の血が混じっている斉賀さんと、神様が見える私。どんな巡り合わせなのだろう。素敵な出会いに感謝しかない。
気づけば外は夕暮れ時。
すっかり夏の暑さもなくなり秋めいてきた。日が傾くのも随分と早くなったように感じられる。
「斉賀さん、今日はお時間いただきありがとうございました。お見積り作成したらまたご連絡します」
「こちらこそ、ご足労いただきありがとうございました」
丁寧な挨拶を返してくれる斉賀さんは、秋の夕日に照らされてキラキラと輝く。まるで神様の存在かのように美しく見えて、しばらく見とれてしまった。
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