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「だってしょうがないじゃない! あんな目に遭って、どうやって許せっていうの」 「許せなんて言ってないさ。むしろ、その感情を表に出してみろと言ってるんだ」 「そんなことしたら、嫌われるに決まってる」 「なぜ?」 「だって彗くんのファンの私が何を言っても、ただのやっかみじゃない。今繋がっている友達も、職場の人も、誰も私と瑠奈の関係は知らないんだから」 「だったら俺に話してみろよ。お前の感情、全部受け止めてやる」  これは誘い水だ。こうやって巧みに恨み言を吐露させるつもりなのだろう。言葉というのは一度口にすることで、口にする前より明確な形を持ってしまう。そして黒い感情が増幅すれば、その具現化である彼の力も高まる。  分かっていても、私にはもう一人でこの感情を抱えきることができなかった。 「……なんで瑠奈が幸せになって、私は幸せになれないの? 苦労してきた人間が大人になっても報われなくて、散々人を傷付けてきた瑠奈が真っ当な顔をして平気で幸せを手にしてる。そんなのおかしいじゃない」 「あぁ、そうだな」 「彗くんも彗くんだよ。なんで星の数ほどいる女の中で、よりによって瑠奈を選んだの? 人を見る目がなさすぎるよ」 「……俺もそう思うよ」 「瑠奈も彗くんも、もう皆大嫌い!」  私は激情のままに吠えた。男はただ頷いて、私の言葉を受け止め続けていた。
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