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「くっ、囲まれたか」  再び男の声で我に帰ると、数十体の化け物に周囲をぐるりと取り囲まれ、逃げ場がない。  一番手前の化け物が不意に足をぐっと曲げて縮こまり、直後、まるでバッタのような格好で飛び上がった。男が大剣を横に一薙ぎして切り伏せる。  どうやらそれが開戦の合図だったらしく、次から次へと化け物が男、ではなく、その後ろに匿われた私に向けて飛びかかってきた。男は私を背にし、また化け物たちに切りかかってゆく。  一体、また一体。倒しても倒してもキリがない。次第に男の息がゼェゼェと苦しげなものに変わってゆく。「無理しないで! 私はいいから!」とつい叫んでいた。 「この期に及んでまだ強がりか! いい加減にしろ!」  男が私に背を向けたまま叫ぶ。 「君はもっと自分を大切にすべきだ! 無理に明るく振る舞わなくたっていい! 黒い感情に支配されそうになったら、俺が何度だって助けてやる!」 「で、でも……」 「黒い感情は誰だって持っているものだ! それだけのことで、君は嫌われたりなんかしない! 勇気を出して、まずは一番身近な奴に打ち明けてみろよ! きっと力になってくれるはずだ!」 「……あなた、一体誰なの? なんでここまでして、私を助けてくれるの?」 「俺は、」  男は私の方をちらりと見やり、少し逡巡した後、ゆっくりとフードを外した。  その顔は……
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