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私達は父の買った土地に来ている。
無駄に広大だ。
「今までの繰り返し人生の中では、イナゴの大量発生により食物が全てやられ、飢餓になった」
「ええ。全ての農作物が食い荒らされたのよね」
その数、三億匹とも言われている。
「この土地には草木が映えていない。という事は昆虫もいない。ここを開拓して一大プランテーションをつくるんですね」
来るべき食糧危機に備えるんだ。オリバー様は凄い。不毛の土地を地の魔法を操り豊作の土地に……
「違う。逆だ」
「えっ?」
「イナゴを集める」
彼らの計画は、一定の土地に全てのイナゴを集める。まずは凍らせる。それでもダメなら焼き払う。全滅するまで繰り返す。
普段は乾燥している砂漠などの地域に、サイクロンやハリケーンなどで大雨が降るとその後草原ができる。そしてイナゴが大量発生する。
広い産卵場所となる裸地があること、エサとなる草が豊富にあること、天敵がいないこと。この3つの条件が揃う土地がお父様の土地らしい。
イナゴが死滅しないと、蝗害は終息しない。
「僕が地をならす。そこに嵐を呼ぶ。君の雷魔法が必要だ」
「うまく……いくのでしょうか」
心配だった。そんなに簡単に草原ができ、そんなに簡単にイナゴの大群がここに集まるのか。
「今まで、国民の食料を確保する為にいろいろ試してみたんだ。けれど、全てやつらに食い荒らされた。だからその方法は間違っている。イナゴを退治できれば、そもそも食糧難は来ない。氷魔法と火魔法で確実に一網打尽にする。タイムリーパー全員でやり遂げる」
巻き戻りの中で、フェリペ王子は、イナゴの集団化が独特のフェロモンの影響で起きている事を突き止めた。
普段単独行動の虫が集団化する理由を解明したという。
そしてフェロモンを操る魔力保持者がタイムリーパーの中にいる。
彼女がイナゴの集団を誘導する。
タイムリーパーたちは、それぞれ違った魔力を持ち巻き戻った。
フェリペ王子が計画の指揮をとり、個々にやるべき任務を与えている。
「凄い計画を立てていたんですね。私は何度も巻き戻っているのに今まで協力してこなかった。皆さんには本当に頭が下がる思いでいっぱいです。勿論オリバー様にも感謝しています」
オリバー様は笑顔で私の髪をクシャっと撫でた。
それからのオリバー様は凄かった。
オリバー様はエリザベス様と離婚した。
そしてサバエバ様から浮気の慰謝料を支払わせた。
巻き戻り前の人生で彼らからまんまと慰謝料をだまし取られてしまった事を根に持っているらしい。
正直私たちは王家がバックについているので、潤沢な資金があった。
それほどお金には苦労していない。
けれど今までの恨みがあったのだろう。彼は浮気の代償を支払わせた。
そしてオリバー様は父に土地の開拓の全面的な許可を得る。
父は無駄な投資をする前にオリバー様に土地を託した。
父の購入した土地は、国民の飢餓を救うために重要な役割を果たす。
穀物を作るためではないけど、イナゴ退治に使われるのなら無駄ではない。
準備は着々と進められ、イナゴが大量発生する土壌が作られていった。
広い広大な土地の土壌改良。
オリバーが地面に両手を付け『ガンッ』と音を立てたと同時に、硬い岩が崩れていく。起伏の激しかった地面がどんどん平坦な耕地へと変わっていく。
土地を見下ろせる高台にフェリペ王子が必要な簡易的住まいを用意してくれた。
「できるだけ居心地が良いように配慮したつもりだ」
「ありがとうございます殿下。ここは数カ月で取り壊されます。もったいないくらい立派です」
寝室とキッチンがある簡易的な家だが、シャワーもあり二人で住むには十分な設備が整っていた。
そしてオリバー様が整地したこの土地に、私が嵐を呼ぶ。
予定では一週間ほどかけて、土地を水浸しにする。局地的な豪雨。
多分災害レベルになる。
私とオリバー様二人がその任務を請け負った。
他のメンバーはイナゴ対策と食料の備蓄担当だ。
そして私はオリバー様と二人でしばらくの間、ここで生活する事になった。
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