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半期毎の人事評価は派遣の私には関係ないが、社員の皆さんには面倒なものらしい。
前期目標を達成出来たかどうかとか、新しく目標も立てないといけない、更に次回の目標は会社で仕事の効率化や新しい事にチャレンジするだけでなけでなく、付け加えてプライベートでも資格所得とか推奨されるらしい。つまり、家で英語とかファイナンシャルプランナーとかの勉強をしろって事。
そういうのを書かないと評価が上がらないのてで書くのがほぼ必須らしい。
放って置いたら駄目なんですか?なんて聞いたら、今回はそのシートを見ながら織田本部長と面談があるらしい。
うげげっ、強面でワンマン織田本部長か…
なんでわざわざ彼が出て来たのか…
それは元々の面談者がメンタルやられて絶賛休職中の上司だから。
優しい彼から薮睨みの本部長の変化に一同気が重くなっていった。
あきこさんが面談から帰って来た時は、怒っていた。
坂本さんが面談時、自分の株を上げる為に他人を落とす策に出たらしい。
それであきこさんは織田本部長から色々言われて頭に血が上った、と言った。
「派遣であるのに悪かったの」
私の向かい側には織田本部長が座っていた。
すごい迫力
いきなり最後に呼ばれてびっくりした。
何聞かれるんだろう、私、評価シートだしてないけど。
「今いるこの部署について思う所があればお聞かせいただきたい」
あっそういう事か。
まあ、私派遣だし契約期間終わったらもうここには来ないしね。
言ってやろうじゃない。
「私が最初に不思議に思ったのは坂本さんです」
「うむ」
「あの人は私がここに配属された時には、
藤原さんにストーカーをしてそれが問題となり謹慎処分を受けていました。
復帰した時は当然配置換えがある筈なのに、坂本さんは変わらず藤原さんの側で一緒に仕事をしています。
女子供は庇護されるべきと思われたのかもしれませんが、決して今の職場環境が藤原さんの役にたっているとは思えません。
藤原さんはまた坂本さんに勘違いされて寄って来られる事を恐れて仕事は頼めず残業が続いています。
坂本さんの仕事量は藤原さんのアシスタントが無い分かなり少ないのではないでしょうか。
藤原さんは逆にやらなくて良い事に縛られて自分の可能性を出し切れていないように思います。
そうでなくても最近は他の人の仕事を引き継いで居ます。
彼女を切り捨て御免にしろ、とは思いませんがいろんな派遣先を経験している私には会社が何の対策を練らないのは会社の緩慢なのではないかと感じます
坂本さんも藤原さんも、お二人共に彼らの能力が生かしきれてないように思います」
「…」
「もう一つ言いたいのは、坂本さんご自身が相当にモンスターということです」
「ほお」
「私は半年に一度、自分の担当のファイルのみならず、上役のファイル整理を行っているのですが、正直半年で新しいファイルが出来ていたり、あるはずのファイルを誰かが持ち出していたりと、完璧に揃っていることは少ないです
私はこんなものだ、と思っていましたし、自分たちが保管しているファイルも毎回期限が過ぎても倉庫に移動していなかったり、リストにないファイルがあったとしてもファイル整理をした段階できっちりとしていれば良いのだ、と思っていました、なにせ、上三役がそんな感じでしたから」
「耳が痛いの」
織田本部長は頭をかいた。
「なのに坂本さんは自分の気に入らない人にだけ、そういう間違いに対して事を大きくしようとする傾向があります」
「…」
「そんな取るに足らぬ事、と最初は思っていても説得されて頷いてしまう、そうではありませんでしたか?」
「話はよくわかった…しかしおぬしの話をワシはどう信じたらいいのだ」
「織田本部長は誰もが畏敬の念を抱かずにはおられない程に物事を見通せる眼力のある人です…そのあなたが派遣の私を呼び出すという通常では起こり得ないことをなさったのは何かお察しになっていたからではありませんか」
「…」
「仕事の進捗について気になる事があるのなら藤原さんと坂本さんのパソコンを何も知らせずモニターしてください」
「なんと…分かり申した、そなたの言うことを考慮に入れることにしよう」
「ありがとうございます」
「ちなみに、お主は直雇用で働く気はないのか」
は?
織田本部長何言ってんの?
今までの私の話全然聞いてないじゃん!
つい立ち上がって私は叫んだ。
「この劣悪な環境で働きたいと思うわけないでしょう!」
あっ、やってもうた。
織田本部長は一瞬目を剥いた
ダメだ、殺される…
その後の一瞬、
「あっはっはっはっはっは」
と会議室中に響き渡る大声で織田本部長は笑った。
「すまぬのう、ちょっとおぬしを試してみたかっただけじゃ」
私はその場でヘナヘナと崩れ落ちた。
それから数日して坂本さんは、織田本部長預かりとなった。
彼はそういう策士が実は好きなのだ。
しっかり叩き直してマトモになったら営業の外回りを命じるらしい。
藤原さんのアシストは結局派遣からベテランで既婚で家族もいるしっかりした女性を迎えることになった。
時々、藤原君は声をかけてくる。
もちろん客先での話とか、昨日のニュースとか
私もニコニコしながら話を聞いているが
実はちょっと心苦しい。
何せこのイケメン顔
本人にその気が無くとも
顔を見ているだけで口説かれるのだ。
坂本さんの事もあるからなあ。
あんまりこういう方向にはなりたくないなあ。
でも顔見てるだけで幸せなんだよね。
やばいなあ、と思いつつ私は藤原君の話に頷くのだった。
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