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「お買い物に行こう!」
「いいよ。何か欲しいものがあるの?」
「水着!」
夏らしい単語が出てきたけれど、私は完全に他人事のつもりで聞いていた。
水着なんてもう何年も着ていない。
「なに、海にでも行くの?」
「行けたらいいんだけどねぇ。でも、まずはこっちで我慢」
こう言って、カナンは自分のスマホを操作し始めた。
その様子を見ながらアイスを食べる。
「ほらほら!」
「近い近い」
目の前にスマホを突きつけられて、私はアイスを一度床に置いた。
カナンからスマホを受け取り、画面に表示されたインターネットのサイトに注目する。
「プール?」
「そう。昨日、ゼミでそこの話題になったんだ」
カナンは現在大学三年生で、確か昨日で前期の授業が終わったと聞いている。
カナンが自ら大学の話をしてくることなんて滅多にないから、私はちょっとだけ意外に思いつつも、なんとなく嬉しい気持ちになった。
「新しくできたんだね。じゃあ、そこに行くために水着を買うんだね?」
「そう。あたし、スクール水着以外持ってないからさ」
私はそれさえ持っていない。
それは一人暮らしを始めたからではなく、実家にもない。
水泳はあまり得意じゃないから、高校を卒業してすぐに処分した。
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