第29話 降ってわいた話たち

65/79
前へ
/221ページ
次へ
「時間はあとどれくらいある?」 「えっと、七分くらいですね」 「まだ見てないのは、中庭と駐車場、それからリビング横の物置ね」  それら全部をくまなく探したら、ちょうど制限時間になるだろうか。  私は少しずつ焦りを覚える。 「これまでの傾向を考えると、駐車場とか裏庭にはないんじゃないかな」 「そうね。誰も気にしてないもの」 「倉じいと陸くんがいるかもしれないですよ?」 「やっと戻ってきたか」  話しながら回廊に出ると、五号室の前に倉じいと陸くんが立っていた。  どうやら少し前からここで待機していたようで、これで裏庭に行く必要はなくなったのかも。 「どんな感じ?」 「時計は見つかっちゃった」 「え、マジ? はずれの箱は?」 「あっさりばれた」  泥棒チームは一緒に行動してたんだね。  これまでの隠し場所は全部倉じいの指示によるものなのかな。 「倉じいのボールも見つけたよ」 「あれは簡単だっただろう。五号室に置いておいたサインボールも僕のだから、そっちは預かっておくぞ」  ものすごく自然に全員が合流した形だけど、まだゲームは終わってないんだよね。  残り時間は泥棒チームみんなで見届けるつもりなのだろうか。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加