第29話 降ってわいた話たち

66/79
前へ
/221ページ
次へ
「裏庭はもういいわよね? 向こうの物置はどうするの?」 「ないと思うけど、僕が見てくるから、ふたりはこのあたりの捜索をお願い」  こう言って、四季さんは小走りでリビングのほうへと向かって行った。  あっちの物置はここからでも一応見えるけれど、誰も注目していないように思える。 「莉亜ちゃんはお庭を見てもらっていいかしら」 「は、はい。静子さんはどうするんです?」 「念のため、各扉をチェックするわ。部屋の中にはなくても、ドアノブの後ろとかにくっついてるかもしれないでしょう」  セロテープを使えばそれも可能なのか。  真剣な表情で六号室のほうへと向かった静子さんを見届けて、私は中庭に降りる。 「さぁ、残り時間はあと数分。警察チームは見事、隠されたお宝をすべて見つけることができるのでしょうか」 「また何か始まったぞ」 「盛り上げてくれるのはいいが、うっかり口を滑らせるなよ」 「俺も余計なこと言わないようにしないと」  カナンの実況を受けつつ、私は足元を中心に見て回ることにした。  さっきのカナンのヒントを信じるのなら、何にも隠されずに見えるようになっているはず。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加